「輝きのある色」「抑えられたスモーク感」「バターっぽさ」
テイスティングでは、黒胡椒をかけたスパイシーなハイボールも。潮の香りや黒胡椒の風味を際立たせた荒々しいストームを味わったあと、いよいよ、タリスカー11年へ。
まずは、ストレートで。アルコール度数が高いカスクストレングスなので、あとは、加水する飲み方だ。
ボブさんが、グラスを手にして、次々に感想を口にしていく。
「今回の11年は、今までに(タリスカーの中で)やったことがないことをするということで、普通のタリスカ―、10年やストームは、ミディアムピートの大麦麦芽を使うんですけど、今回はあえてライトピート。具体的なppmの数値は明かされていませんが、ライトピートというと10ppm以下なので、恐らく5~10ppmの間かなと」
ウイスキーの製造過程で、ピート(泥炭)を焼いて麦芽を乾燥させる際に煙で独特の香りがつく。「ppm」は、いわばピートでの乾燥の程度を示すフェノール値を表す。香りを構成する要因は複雑で、単純には言い切れない部分もあるが、フェノール値が高いと一般的にスモーキーフレーバーをより感じるウイスキーになるとされる。
「一番のポイントは、光、色ですね。輝きのある色がすばらしいです。あと、通常のタリスカーですと、セカンドフィルとかリフィル樽にアメリカンオーク樽を使うことが多いんですけど、ファーストフィルのアメリカンオーク樽を使いながら、シーズニングのワイン樽も使っているので、今までにないタリスカーになっている」
「香り、本当におもしろいですね。ピーティーさ、スモーク感がちょっと抑えられている」
「アメリカンオーク樽からの甘さもありながら、オールドボトル特有のというか、貯蔵庫の中のような、いい意味でちょっとかび臭い感じのところもある。特に、ワイン樽で、こういう風味がよく出てくるんですね」
「一口飲んでみましょう。バターっぽさもあって、甘さもあります。ライトピートなので、スモーキーなものが初めての人でも、いいかもしれませんね」
しっかり残るバター感
グラスをかざして色を確かめる。ウイスキーの代表的な色合いの琥珀色というよりは、きれいなゴールド。ボブさんの言うように、美しく輝いている。香りを嗅ぎ、口に含んだ。
ほのかな潮の香りと軽いスパイシー感に加え、ほどよいスモーキーさ。タリスカーらしさが、伝わってくる。ただ、従来のタリスカー10年などと違う点は、ボブさんが飲んで最初に言ったように、「バターっぽさ」だろう。舌の上に、ウイスキーの“旨味”が広がってくる。とてもなめらかだ。
驚いたのは、ほぼ一対一で加水しても、バター感がしっかり残ったことだ。まろやかさが増して、これも、うまい。
「カスクストレングスは、(水を加えて度数を調整することで)自分の好みにあわせることができる。飲み手が、(ウイスキーの)個性を出すことができる。水を入れて、自分にとってはどれが一番美味しくなるのかを探るのが楽しい」
ストレートでもよし、そして水を加えて自分だけの味に。ボブさんが言うように、ウイスキーの楽しみが広がる一本だ。
文・写真/堀晃和
■「タリスカー 11年」商品概要
商品名:タリスカー 11年
発売日:2023年8月23日(水)から順次展開
容量:700ml
価格: 1万5000円(税別)
アルコール度数:55.1%
原産地:スコットランド・スカイ島、カーボスト
熟成:11年熟成/アメリカンオーク樽のファーストフィル、アメリカンオーク樽のリフィル、ワインシーズニング樽
【テイスティングノート】
色:深く輝くゴールド
香り:潮風の香りと軽いスパイスの刺激。
乾いた海藻を燃やす浜辺の焚き火。麻、海潮、煙たいエンジンのような奥深さが調和している。
ボディ:ミディアム
味わい:滑らかでオイリーな舌触りと、全体に素晴らしい甘み。スモーキーでスパイシー、独特の果実味。
煙と海霧を通して見える果樹園の中心に絶妙な塩気。唐辛子の刺激。加水すると、フルーティな甘みと塩気が引き立つ。
フィニッシュ:ややスモーキーで、温かみのあるスパイスが長く残る。