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関東平野のほぼ中央、茨城県境町には建築家、隈研吾氏の設計によるカフェや美術館、特産の開発施設などの公共施設6棟が点在、日常生活に溶け込んだ“隈研吾ワールド”を満喫できる隠れた名所になっています。2023年度中には、民間施設を含め新たに2棟が完成予定とのこと。なぜ、人口2万人ほどの町に、隈氏の建築が集中しているのでしょうか。

11月3日開館「魔法の文学館」や「国立競技場」などを手がけた世界的建築家

隈氏は、国立競技場やJR山手線「高輪ゲートウェイ」駅舎などを手掛けた、国内外で活躍する建築家です。「隈研吾建築都市設計事務所」(東京都港区)のホームページを見ると、こうした巨大な建築にとどまらず、飲食店や市役所、校舎といった暮らしの中に息づく建物の多くにも携わっていることがわかります。

最近では、2023年11月3日に開館する「魔法の文学館」(江戸川区角野栄子児童文学館)が、話題です。同館は、『魔女の宅急便』の作者として知られる角野栄子さんの世界観をイメージした施設です。そんな暮らしと共にある隈氏の建築が、町内に集中しているとして近年、隠れた名所となっているのが茨城県境町です。

2023年の暮れまでに公共施設(町有施設)は7棟目が完成予定。隈氏設計の公共施設の数について、境町は「令和5年度、都内を除く全国市町村では単独トップだと認識しています」と説明しています。

「道の駅 さかい」隣接のレストランは、杉材を使った形状がユニーク

茨城県南西部、千葉県との県境の利根川にかかる橋のたもと、国道354号沿線で、人目を惹くのが「道の駅 さかい」に隣接する「さかい河岸レストラン 茶蔵(ちゃぐら)」。鉄筋2階建てレストランの大きなガラス窓に沿って、すのこのような何枚もの杉材がそれぞれ角度を変え、流れるように配置されています。中には、地域の特産品であるさしま茶を栽培するプランターが置かれ、新茶の季節には、若緑色の茶葉が見え隠れし、訪れる人の目を和ませています。

「さかい河岸レストラン 茶蔵」の外壁に配置された杉材の中では、特産品のさしま茶が栽培されている


さしま茶は1859(安政6)年、日本茶として初めてアメリカに輸出されたことで知られています。店内1階のショップには、古い茶箱の上に商品が置かれ、さしま茶で染めた布が天井から吊り下げられています。特産品のさしま茶をモチーフにした外観に呼応するかのような内装とともに、さしま茶の歴史をいまに伝えています。

レストランと隣接する「道の駅 さかい」との間にも、杉材が角度を変えながら流れるように続いている

敷地内にあるサンドイッチ店「さかいサンド」も、隈氏が境町で最初に手掛けた建物とあって要チェック。入口はまるで立体パズルのように木材が組まれ、木々の隙間から自然光が降り注ぎ、森林浴をしているかのようにリラックスできます。デザイン性に富んでいながらも、あふれんばかりのぬくもりに癒される―隈氏が創り出す建築の醍醐味を体感できます。

「さかい河岸レストラン 茶蔵」1階のショップ内には、さしま茶で染めた布がダイナミックに吊り下げられている
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現在は町の施設6棟、無料の自動運転バスで巡回できる!...
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中島幸恵
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