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合格までの人、合格からの人

さて、もし無事に逆転合格を果たせたとしたら、それでハッピーになれるでしょうか。それについても考えておく必要があります。

「東大までの人、東大からの人」という言葉があります。

高校時代は成績優秀で、東大に入学はしたものの、その後それほど活躍することなく終わる人を「東大までの人」、東大に入ってからますます飛躍し活躍する人を「東大からの人」と切り分け、どちらかというと前者を揶揄する表現です。

大変シビアな表現になってしまいますが、中学受験においても、「合格までの人、合格からの人」という現実が存在します。

中高一貫の進学私立校に通うA君は、小学校時代は全国模試で1桁の順位をとるなど、かなり優秀な成績を収めていました。しかし入学後は、中学受験の反動であまり勉強をしなくなり、中学3年生のときには、学年で後ろから1桁の順位にまで成績が落ち込んでしまいました。しかし過去のプライドが邪魔するのか、他人から素直に教わるということが出来ず、結局浮かび上がることなく塾を去っていきました。

一方、学年は違いますが、同じ学校のB君は、中学受験時の成績は合格者の中で中ほどの順位でした。しかし入学後の6年間、ほとんど塾に通うこともなくコツコツ勉強を積み上げた結果、高校3年のときには全国模試で1位をとるようになり、東大理科III類に現役でトップ合格を果たしました。

「合格」は最終ゴールではない、消息が分からなくなったクラスメート

中学受験のときの序列が、大学受験のときには大きく逆転してしまったA君とB君。両者の違いは何でしょうか。それは、合格を「ゴール」としている人と、合格を「通過点」としている人の違いにほかなりません。

合格があまりに目的化してしまうと、それを達成した後には何があるのでしょうか。もしかするとそこには深い虚無感の闇が待っているかもしれません。

私が大学に入学してしばらく経った頃、いつも授業は欠席で、一度も姿を見せないクラスメートが2名いました。そのうちの1名は、慶應大学医学部にも合格し、そちらに入学したと友人から聞きました。しかしもう1名については、その消息を知る者は誰もいませんでした。クラスで、ある委員をしていた私は、そのクラスメートにコンタクトする必要があり、休学や退学でもしているのかと学生課にたずねに行ったことがありました。

しかし、学生課の担当はあいまいな反応で、「気にするのは分かりますけど」というだけで、詳しいことは教えてくれませんでした。合格ばかりを至上命題にすべきではないという考えの根源がここにあります。

逆転合格の心構え「まず何のために合格したいのかを明確にする」

逆転合格を目指すなら、まず何のために合格したいのかを明確にしておく必要があります。もし合格すること自体が目的化してしまっているとしたら、むやみに逆転を目指すのは考え直した方が良いかもしれません。逆転合格を果たすためには、さまざまな犠牲を伴います。そこには無理やひずみも生じます。仮に希望の学校に受かったとしても、その後順調に行くかどうかは分かりません。背伸びして進学校に入っても、入学後に成績が低迷し、なかなか浮かび上がれない“深海魚状態”となってしまい、重苦しい学校生活を送る例も現実にあります。

一方で、リスクは十分認識したうえで、合格はあくまで通過点、その先に目指すものがあるというのであれば、大いにチャレンジすべきだと思います。そのような精神であれば、不合格を臆することなく、驚異的な結果をたたき出す可能性があります。仮に受験に失敗したとしても、次なる目標に向かって進んでいけるはずです。

子どもがどのような姿勢で受験に向き合うかは、親御さんの姿勢にもかかっています。子どもは合格することだけを信じて邁進するのみです。しかし親御さんは、受験に失敗した時や、合格した後のことも想定して、環境を整えてあげる必要があります。逆転合格を目指す陰には、そのような親御さんのサポートも求められるのです。

圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。

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圓岡太治
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