湯気をたててやってくる丼の中には、たっぷりおツユに浮かんだ冬の食材。牡蠣か鴨か、はたまたニシンか。それらを絡めて啜る蕎麦がまぁおいしいわけで。そんなごちそう蕎麦8杯、どうぞ召し上がれ。 【牡蠣】 『手打そば さかき』 @…
画像ギャラリー湯気をたててやってくる丼の中には、たっぷりおツユに浮かんだ冬の食材。牡蠣か鴨か、はたまたニシンか。それらを絡めて啜る蕎麦がまぁおいしいわけで。そんなごちそう蕎麦8杯、どうぞ召し上がれ。
【牡蠣】 『手打そば さかき』 @浅草橋
ぷっくり太った牡蠣を心ゆくまで味わう蕎麦はまさに冬の醍醐味
寒くなってくるとメニューに加わる「牡蠣南蛮そば」は、オープン以来の冬の定番。心待ちにするファンも多い。「生食用の大きな牡蠣が出始めたら解禁です」と店主の榊原弘順さん。
牡蠣南蛮そば 1800円
澄んだツユに大ぶりの牡蠣が4つ、少し散らした長ねぎがいい合いの手だ。三つ葉、ゆず、あおさ海苔が湯気の中に香りを放ち、手繰る前に思わず深呼吸したくなる。牡蠣の旨みが解け出たツユも上品で、気づけば飲み干してしまう。
榊原さんが料理で大切にしているのは季節感。蕎麦もつまみも、走りと名残の食材を入れ替えつつ、少しずつ移り変わっていく。だからこそ、またすぐにでも行きたくなるのだ。
[住所]東京都台東区浅草橋4-10-2 稲垣ビル1階
[電話]03-4285-1192
[営業時間]11時半~14時(13時半LO)、 17時半~21時(20時LO)※月は夜のみ、蕎麦が売り切れ次第終了
[休日]水・木
[交通]JR総武線ほか浅草橋駅西口から徒歩2分
【牡蠣】 『武蔵国分寺 潮(うしお)』 @西国分寺
熱々でいただく旨みほとばしる牡蠣と 噛みしめるほどに旨い十割の平打ち
うどんにはあるが蕎麦には鍋焼きがない。そう思っていたらここにありました。「十割の蕎麦は伸びやすいから平打ちにしています」。そう話すのは料亭の料理長だったという店主の潮幸司さん。ツユは聖護院かぶらのすり流しで甘くとろりとさせ、牡蠣に火が入りすぎない絶妙なタイミングで運ばれてくる。
牡蠣のなべ焼きそば 2200円
そう、これは和食の達人だからこそできる離れ業だ。だって繊細な蕎麦を鍋焼きにしようという発想がもう冒険である。日本料理と呼びたくなるつまみも白子やニシンなど冬のごちそう揃い。おまけに冬限定の幻のカレー南蛮もあるというから興味津々。ぜひ両方制覇を目指してみたい。
[住所]東京都国分寺市西元町2-18-11
[電話]042-359-2898
[営業時間]11時半~13時半LO ※土・日・祝は~14時半LO、17時~21時(20時半LO)
[休日]火
[交通]JR中央線西国分寺駅から徒歩7分
【鴨】『蕎麦前 ながえ、』 @尾山台
ロゼ色の火いれがどこよりも美しい 研ぎ澄まされた唯一無二の鴨南蛮
「鴨南蛮が好きであちこち食べ歩きました」という店主の中溝伊織さん。研究の果てに作り上げたのがこの理想のスタイル。蔵王で育てたという鴨は、肥育期間が長いため旨みがしっかり肉にのり、程よく弾力のある肉質がいいという。それを低温調理でしっとり仕上げる。
鴨南蛮そば 2100円
ツユの熱で肉が締まるのを避けるため、上にのせた鴨肉は厚く切り、さらに別添えの肉は薄切りに。「そのままつまみにしてもいいですし、ツユに沈めて食べる方もいますね」という。店名からもわかる通り、日本酒や焼酎、つまみが豊富だから飲んで食べてが楽しい店。〆の「鴨南蛮」までの道のりも呑兵衛には最高だ。
[住所]東京都世田谷区等々力4-9-3 M’sGarden尾山台1階
[電話]03-3701-6050
[営業時間]11時半~14時LO、18時~21時LO
[休日]火 ※月に2~3回の不定休あり
[交通]東急大井町線尾山台駅から徒歩3分
【鴨】『手打ち蕎麦 芳とも庵』 @牛込神楽坂
ツユにあふれる鴨の滋味 それをまとめ上げた季節限定の一杯
11月下旬から2月末までのひそやかなお楽しみがこの「野鴨蕎麦」。新潟の猟師から届く野生の鴨で作る一杯だ。天然のものゆえ仕入れも不安定な上に手に入らないこともある。そのため前日までの完全予約制。そんな高いハードルを乗り越えてでも、やっぱりこの味を求めてしまう。
野鴨蕎麦 2500円前後
鴨の滋味が溶け込んだツユを飲めば、本枯節の風味と共に広がるコクと旨み。それはどこまでも力強く、深い。身にたたえた脂は澄んだ甘みに満ちていて、蕎麦をすすった後に鼻から抜ける香りは重厚だ。さらにこの野鴨のガラでスープをとり、身をさっとくぐらせて食す贅沢な鍋のコースも数量限定で用意する。
[住所]東京都新宿区納戸町10
[電話]03-3235-7177
[営業時間]11時半〜14時半LO(土・日・祝のみ)、17時半〜22時(21時半LO)※蕎麦がなくなり次第終了
[休日]月(他不定休あり)
[交通]都営地下鉄大江戸線牛込神楽坂駅A1出口から徒歩5分
【にしん】『石神井 こねり庵』 @石神井公園
そろり、そろりと炊き上げたニシンは ふんわり、しっとり身もだえする旨さ
にしん蕎麦といえば、かけそばにニシンがごろんと寝ているのが定番。しかしここでは別添えだ。これ、なんと5日もかけて炊いた渾身の作で、火を入れたり、冷ましたりを繰り返してゆっくり煮上げている。だから箸を入れるとほろりと崩れ、食べればジュワンと滋味が沁みる。
にしんそば 2100円
かけそばもニシンもまずはそのままを味わい、次にニシンを乗せてツユに溶けた旨みを味わう、と一杯で2度おいしい。一緒に炊いた昆布も添えられているが、これまたニシンのエキスを吸って酒がすすむアテなのだ。このほかにも中華風あり、洋風ありと、蕎麦屋らしからぬつまみが充実で楽しませてくれる。
[住所]東京都練馬区下石神井6-41-30
[電話]03-6913-3706
[営業時間]11時半~15時、18時~20時半、土11時半~20時半※日・祝は~19時半※昼、夜ともに蕎麦がなくなり次第閉店あり
[休日]水
[交通]西武池袋線石神井公園駅から西武バス荻窪行き「井草通」下車、徒歩2分
【淡雪】『蕎麦切 森の』 @本郷三丁目
この時期だけの北海道産長芋で はんなりとした淡雪蕎麦をたぐる
淡雪は卵を泡立ててかけそばにのせたもの。そこに角切りの長芋を乗せ、淡雪にもとろろを少し加え、磯の香りが鮮やかな海苔や柚子をあしらっている。実はこの長芋が決め手で、北海道産の秋掘りの新物を使うから、この季節だけの限定メニュー。『森の』ではせいろは濃口と淡口からツユが選べるが、温蕎麦は淡口ですっきり仕上げる。
北の淡雪 1850円
淡雪を食べ進むと、このツユと卵が混ざってまろやかになり、最後のひと口までおいしくいただける。また、市場から最上の素材を吟味して入れているので、天ぷらや刺身も絶品。蕎麦前に冬の味覚をたっぷり味わい、最後にこの蕎麦でさらりと〆るのも粋だ。
[住所]東京都文京区本郷2-25-1 ムトウビル1階
[電話]03-3818-9555
[営業時間]11時半〜14時LO、17時〜20時半(20時LO)、土:11時半〜14時半(14時LO)
[休日]日・祝
[交通]地下鉄丸ノ内線本郷三丁目駅1番出口から徒歩1分
【すき焼き】『向島七福 すずめの御宿』 @押上
すき焼きと蕎麦 思いがけない相性の良さに感動しきり!
冬のご馳走の王道、すき焼きに蕎麦を合わせた異色のメニュー。すき焼きの〆はうどんでは?と思うかもしれないが、意外にも抜群に合うのである。まず、割り下との相性が良い。茨城県産常陸秋そばの丸抜きを使用した十割蕎麦は香り豊か。少し濃いめの割り下に負けない風味で、互いの味を引き立て合うのだ。
和牛すき焼き鍋蕎麦 1680円(昼) すき焼き鍋蕎麦 1980円(夜)
タレに浸した蕎麦を溶いた生卵に絡めて食せば、とろろ蕎麦のような食感、まろやかな味わいに魅了されてしまう。すき焼き自体も、上質な和牛をはじめ、れんこんや長ねぎ、エノキダケ、麩などが入り、具だくさん。豪華なすき焼きと蕎麦とのマリアージュを心ゆくまで楽しみたい。
[住所]東京都墨田区向島2-15-13
[電話]03-3622-4235
[営業時間]11時半~15時、17時~21時半(21時LO)
[休日]水(年末年始は営業)
[交通]地下鉄半蔵門線ほか押上駅A3出口から徒歩12分、東武伊勢崎線とうきょうスカイツリー駅東口から徒歩8分
【釜あげ】『蕎麦前 山都(やまと)』 @六本木
熱々モチモチ 太めの蕎麦をポタージュ状の蕎麦湯と共に
湯がいた蕎麦を釜からあげて、蕎麦湯とともに器の中へ。そこに九条ねぎをどっさり。まだグツグツ状態の蕎麦を、何もつけずにそのまま手繰る。モチモチした太麺は蕎麦の風味が濃厚で、なんとも旨い。ツユに浸せばキリッと引き締まり、シャキシャキした九条ねぎ、生姜との相性もばっちりだ。
たっぷり九条葱 釜あげそば 1300円
時間が経つと、蕎麦湯が段々ポタージュ状になるのも楽しい。店名に“蕎麦前”とつくだけあり、酒肴はもちろん、肉や魚の焼き物、唐揚げ、単品から頼める天ぷらなど、居酒屋使いできるメニューが豊富。ひとしきり飲んだ後に釜あげ蕎麦を食せば、体がポカポカと温まり、心地よい余韻に包まれそう。
[住所]東京都港区六本木6-12-2 六本木ヒルズけやき坂通り1階
[電話]03-6447-1268
[営業時間]11時半~14時半(14時LO)、17時半~23時(22時LO)※日・祝の夜は17時~22時(21時LO)
[休日]年末年始
[交通]地下鉄日比谷線六本木駅1C出口から徒歩6分
撮影/貝塚隆(さかき、ながえ、、芳とも庵、こねり庵、森の、すずめの御宿)、西崎進也(潮)、石井明和(山都)、取材/岡本ジュン(さかき、潮、ながえ、、こねり庵、森の)、菜々山いく子(芳とも庵)、松田有美(すずめの御宿、山都)
※2023年12月号発売時点の情報です。
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