思い思いのスタイルで粋に楽しむのがよし
蕎麦屋が好きだ。それはもちろん蕎麦自体が好きっていうのもあるけど、使い勝手がいいし、どこか粋で居心地がいいからだろうな。
思うに昔の蕎麦屋は通し営業の店がほとんどだったが、するってえと、昼下がりにちょっと小腹が空いたときにササっと手繰るのもよし。仕事が早く引けたときに、昼から軽く一杯やってても罪悪感なし。おまけにそれが江戸時代から受け継がれてきたスタイルとあっちゃあ、日本人のDNAが自然と揺さぶられるというわけで。
通し営業の蕎麦屋も随分減ったが、そんな昔ながらのよさを存分に味わわせてくれるのが新橋にあるこちら『能登治』だ。創業が安政年間(江戸時代)で2代目が明治に新橋へ移って以来というから年季が入ってる。カツオ節一本でダシをとったツユとのど越しのいい二八の蕎麦。
変わらぬよさがあるかと思えば、「じゃこマヨ」しかり、つまみには蕎麦屋の定番以外にもクセになる変化球も。一杯やるなら、蕎麦焼酎のわさび水割りもいい。蕎麦屋らしく本わさびの香りと甘さが何ともいい。
『能登治(のとじ)』麦焼酎わさび水割り 990円、煮油揚げ 550円、じゃこマヨ 700円
通しと言えば、少し他所と違った朝7時から蕎麦屋の醍醐味を満喫できるのが、築地場外にある『長生庵』だ。もともとは場内の人の仕事終わりや買い出しに来た人が利用できる時間帯であったゆえだが、今も変わらず「朝飲み」する常連さんはいらっしゃる。もちろん腹拵えの客も。
『長生庵(ちょうせいあん)』海鮮10色丼そば付きセット 2500円
「その全部に応えられるよう」メニューが多いのも特徴だ。しかも築地らしく、昔ながらの蕎麦のみならず、本マグロをはじめ、新鮮な旬の食材を使った料理があれこれ。さらにクラフトビールに日本酒も充実。通わずにいられようか!?
モダンな中にも落ち着いた店構え、中目黒の『驀仙坊』もいい。通しの営業は大変なれど「自分がこの時間帯にやっててほしいと思うから」とはご主人の言葉。つまみは酒のアテなので一品でも満足できるよう「コースの店の味よりは濃いめ」とも。
『驀仙坊(ばくざんぼう)』鴨ロースト 1300円、海老の西京焼き(2本) 2500円
2、3のつまみで一杯やって蕎麦で〆るのにちょうどよしだ。玄蕎麦挽きぐるみの蕎麦はツヤっとのど越しよく、蕎麦の風味もしっかり。最後の蕎麦がブレずに受け止めてくれる。それがまたいいんだよなあ。
撮影/小島昇(能登治、驀仙坊)、高井潤(長生庵)、取材/池田一郎
※2023年12月号発売時点の情報です。
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