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2024年元日に起きた能登半島地震から1カ月が過ぎました。全国各地から被災地を支援する動きが高まるなか、東京スカイツリーのお膝元にある東京都墨田区の銭湯「押上温泉 天然温泉 大黒湯(だいこくゆ)」の取り組みが注目されています。女性の銭湯ペンキ絵師によって浴室の壁画を刷新したほか、3月末まで入浴料の一部が石川県に寄付されます。湯けむりの向こうに描かれた被災地への思いとは―――。

大黒湯があるのは、東京スカイツリーのお膝元。下町情緒あふれる路地裏の銭湯とのコントラストが青空に映える

都内在住の絵師が描く石川県の景勝地「見附島」

能登半島地震の発生から間もない1月9日、大黒湯のシンボルともいえる浴場の壁画(幅10メートル、高さ3メートル)が描き変えられました。さわやかな青の色調を背景に、壮大な富士山とともに描かれたのは、地震で一部が崩壊した石川県珠洲(すず)市の景勝地「見附島(みつけじま)」と、金沢の伝統工芸「加賀八幡起上り(かがはちまんおきあがり)」です。男湯と女湯を跨って富士山の裾野が伸び、向かって右手前の海岸に「見附島」があります。

銭湯ペンキ絵師の田中みずきさん(41)が、大黒湯の三代目店主、新保卓也さん(44)に、「絵を見て、東京から被災地への関心が高まれば」と提案したことで、実現しました。

新保さんは「甚大な被害を受けた石川県の支援に銭湯として何かできないかと模索していたところ、田中さんからペンキ絵のご提案があり、早速描いてもらいました」と経緯を説明します。利用客からも、「石川県に思いを馳せることができる」と好評だそうです。

店主の新保卓也さんは、大黒湯の三代目。さまざまなアイディアで銭湯を盛り上げている

「軍艦島」ともいわれる高さ28メートルの奇岩

田中さんは、国内に3人(他の2人は、丸山清人さんと中島盛夫さん)しかいない銭湯ペンキ絵師の中で最年少。大学生の時の2004年に中島盛夫さんに弟子入りし、2013年に独立しました。2014年2月には、珠洲市の銭湯「宝湯」の別館で見附島を描く機会があり、実際に現地を訪れたそうです。

「見附島は島の形が軍艦に似ていることから、別名『軍艦島』とも呼ばれる高さ28メートルの奇岩」(珠洲市のHPより)。田中さんは被災地の様子を気にかけるなか、地元紙のHPで様変わりした見附島の写真を発見し、「絵筆で被災地を支援したい」と、敢えて今の見附島を描こうと決めました。

被災地の人々にショックを与えないか、直前まで迷いがあったと言いますが、「ただ、見続けていると、崩落しながらも、堂々とそびえ立つ雄姿が何とも美しい。見附島から『このさまを描いてくれ』と言わんばかりの迫力を感じて絵筆をとりました」。

「加賀八幡起上り」は松竹梅を描いた朱色の人形。郷土玩具として石川県で大切に扱われている縁起物です。田中さんは、「復興へ向けて力強く起き上がる」との願いを重ねると同時に、「見た目の愛おしさで、つらい時も癒される」として、見附島と共に描きました。「再び美しい景色を取り戻せるよう、被災地に思いを寄せ続けていきたい」と話します。

一部が崩壊した「見附島」。能登半島地震の衝撃の大きさが伝わる。左上に見えるのが「加賀八幡起上り」。柔和な表情に癒される
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入浴料から10円を石川県に寄付、1月分は見込額20万円を送金...
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