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椎茸の旨味も隠し味「ラーメン」が地元で大人気

湧き水が豊富な鹿児島は養鰻業も盛んで、ウナギの生産量はダントツの日本一(2位の愛知県の倍近く)。このウナギの名店が霧島神宮近くの『よし宗』だ。周囲は山また山の、ポツンと一軒家風の店舗は常時行列が絶えない超人気店であり、炭火でこんがり焼いた肉厚の蒲焼きは、九州中の食通の垂涎の的とか。

県民のソウルフード、ラーメンは鹿児島市内の老舗店『こむらさき』や『くろいわ』『のり一』等が有名だが、霧島にも舌の肥えた地元民が愛してやまない店がある。鹿児島空港から2kmほど北上した山間部、県道沿いにひっそりと佇む、古き良き昭和のドライブインのごとき趣きの『まことラーメン』がそれ。細めの自家製麺に、豚骨、鶏ガラ、原木椎茸の旨味を凝縮したスープは絶品。分厚い炙りチャーシューと、ふわっと盛られた花かつおが食欲をいや増す。

地元には熱烈なファンがいる。営業時間11時~15時(火曜、水曜定休日)

近くには山あいの無人駅ながら、全国区の知名度を誇る嘉例川駅(JR肥薩線)も。明治36年(1903年)の開設以来、120年余り後のいまも現役の木造駅舎(国の登録有形文化財)には見学者が引きも切らず。わたしが子供の時分は、草深い田舎の、忘れ去られたような小さな駅だっただけに、隔世の感がある。

鉄道ファンも多く詰めかける(提供:霧島市観光協会)

霧島連山の中腹に広がる霧島温泉郷は、砂蒸しが有名な指宿温泉と並ぶ、鹿児島を代表する名湯だが、わたしのイチ押しは国分平野を流れる天降川沿いの日当山温泉だ。共同浴場や旅館が点在する県内最古の温泉場は、西郷隆盛が頻繁に逗留したことでも知られる。この維新の英傑はひなびた温泉宿を根城に、狩猟やアユ釣りを存分に楽しんだとか。霧島連山と桜島を一望のもとに見渡す眺望も抜群。

天降川の上流には、坂本龍馬とお龍が新婚旅行で10日ほど滞在し、故郷土佐の姉乙女へ「此世の外かとおもわれ候ほどのめずらしき所ナリ」と書き送った塩浸温泉があり、龍馬ファンの一大聖地となっている。

塩浸温泉は炭酸水素塩泉(提供:霧島市観光協会)

ちなみに司馬遼太郎の『竜馬がゆく』には、塩浸温泉取材時のこんな体験談が。

「みなけげんな顔をした。そんな温泉は聞いたことがないという」「わざわざ京都から薩摩へ新婚旅行にでかけたこの道の草分けともいうべき竜馬の温泉は、ほとんど地名さえ忘れられている」

フェイドアウト寸前の山深い渓流のほとりの小さな温泉を、広く世に知らしめた『竜馬がゆく』には畏れ入るばかり。次回は鹿児島の名を世界に轟かせたあの映画を中心に紹介する。

永瀬隼介(作家)
週刊新潮」の記者として活躍し、その後小説家に転身。『サイレントボーダー』『閃光』など数多くの犯罪小説を刊行。2020年に出版した『霧島から来た刑事』が好評で、3月13日に第2弾『霧島から来た刑事 トーキョー・サバイブ』が刊行される。ノンフィクション作家としては、『19歳―一家四人惨殺犯の告白』などの作品を手掛ける。

『鹿児島から来た刑事 トーキョー・サバイブ』

鹿児島県警の元敏腕刑事が愛妻を亡くして自暴自棄になる中、以前東京で知り合った元ヤクザから「恋人が失踪した」とのSOSの電話が入る。背後には、霊感商法の巨大宗教法人があり、腐敗した政治家との癒着も明らかになる。元やくざの恋人は、宗教2世だった。無骨だが正義感あふれる元刑事による「薩摩隼人流」の捜査が、犯人を追い詰める。

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おとなの週末Web編集部 出樋
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