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約40年前にできていた“生シードル”の原型

「ニッカシードル」として製造・販売が始まったのは、1972(昭和47)年からだった。製法に画期的な変化があったのが1985年。「非加熱製法」によるフレッシュなシードルが生まれる。フィルターでろ過して酵母を取り除く。生ビールと同じやり方だ。北海道と青森県での限定発売を経て、1988年には全国で商品展開した。

つまり、現在の「ニッカ弘前 生シードル”の原型は、ほぼこの時点でできあがっていた。

“ほぼ青森県産”りんご、熱処理せず、糖類・香料無添加

「りんごの風味を生かすことにこだわったんです」

瀧瀬工場長は、こう力を込める。「ニッカ弘前 生シードル」の最大の特徴が「りんごの風味を生かす」だ。

「フランスのシードルを参考にして、りんごを丸ごと絞って、それをそのまま発酵させる。糖類、香料無添加で、国産りんご100%で作ることにこだわっています」

「ニッカ弘前 生シードル」。左からスイート、ドライ、ロゼ

こだわりのポイントは3点。
(1) 東北産りんごを原料として使用→地元のりんごのおいしさを楽しめる
(2) 10度以下の低温でじっくり発酵→りんごの新鮮な風味を引き立てる
(3) 熱処理しないこと→りんごの繊細な香りを生かしている

東北産というが、ほぼ青森県産といっても齟齬はないという。「県境のりんごも入ってきてしまうかなと、真面目に考えたんです」と瀧瀬工場長は笑う。

「加熱した濃縮果汁を使えば、いくらでも、どんなタイミングでもできるが、我々は皆さん(農家の方々)が収穫した加工用りんごをそのまま絞って、発酵させる。そういうことによって、りんごの風味を生かす。そこにすごくこだわっています」

10度以下の低温発酵、0.1度刻みの温度調整

「生」以外に、注目したい点は、低温発酵のことだった。10度以下で、じっくり発酵して製造する例はあまりないのだという。この珍しい発酵過程を経ることも、りんごの風味を残すことに大きく寄与している。

見学後の質疑では、担当者からさらに詳しく聞けた。

公の研究機関で、シードルの発酵条件とされている温度が一般的には15度という。海外では、自然発酵で温度管理をしない例もあるそうだ。

「(ニッカ弘前 生シードルの場合は)10度以下というかなり発酵しにくい低温でじっくり行う。その分、りんごの香りが残る。特殊な酵母を使わないとなかなかうまくいかない」

発酵期間はアルコールをどの程度にするかで変わってくるが、スイート向けで1~2週間、ドライ向けで4週間~1カ月ほどだという。

「発酵すればするほど、香りは失われる方向にいきます。高い温度で発酵すると、その分、香りがとんでしまう。だから、低い温度でゆっくり発酵させる方法を取っている」

温度管理は、かなり厳密だ。聞くと、0.1度単位で細かく調整しているという。

「10度以下といっても、一定の温度で発酵しているわけではありません。もっと下で、(状況をみて)下げている。やはり農作物なので、発酵の仕方を同じにやっていても、タンクごとに全然違ってくる。毎日分析して、酵母の状態をみて、温度を0.1度刻みで変えています」

「短時間の熱処理はそんなにもとの香りを損なわないという文献もある。それでも、熱処理は避けたいと思って、非加熱で、微生物を制御する技術を使ってやっている」

品質の高さが伝わってくる。

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「洗浄」「選果」「搾汁」「発酵」…工場を見学...
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おとなの週末Web編集部 堀
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