りんごの味がストレートに伝わってきた
一連の工程を見たあとは、試飲だ。通年販売している「スイート」「ドライ」「ロゼ」の3種に加え、季節限定品も味わった。
「スイート」(原料のりんごがふじ主体、度数3%)は「リンゴの風味を多く残した甘口タイプ」(資料より)。
「ドライ」(ふじ主体、5%)は「アルコール度数高めのすっきりタイプ。料理との相性が良い」(同)。
「ロゼ」(紅玉やふじ他、4%)は「鮮やかなロゼ色のやや甘口タイプ」(同)。
「スイート」から試してみる。りんごの味がストレートに伝わってくる感じだ。バランスの良い甘さが舌に広がる。たしかに、こだわった“りんごの風味”が生きている。おいしい。
「ドライ」は、すっきりとした印象。料理に合う味わいだ。
「ロゼ」は、さわやかな甘さ、淡いピンクが美しい。
季節限定も3種類あった。
「紅玉」(紅玉、3%、販売期間4~6月)は「紅玉ならではの酸味の利いたパンチのあるタイプ」(同)。
「トキりんご」(とき、3%、6~9月)は「ときの爽やかな甘味と香りが強く、穏やかな酸味が特徴のタイプ」(同)。
「新酒(ヌーヴォ)」(つがる主体、2%、11月~1月)。「つがるの甘みを多く残した甘口タイプ」(同)。今年収穫したばかりのりんごを搾汁・醸造し、その年の内に発売される。使われるのは早生品種「つがる」など。
「新酒」を飲むと、甘酸っぱさと同時にまろやかさを感じた。聞けば、これは品種由来のものだという。ここからも、“りんごの風味を生かす”ポリシーが明確に伝わってきた。2%という度数を考えると、低アルコール嗜好の世代に好まれそうだ。
「トキりんご」は、さわやかな甘味と穏やかな酸味でバランスが良い。「紅玉」は、酸味が先にくる感じ。そのあとにはすがすがしい甘味が感じられた。
他に、プレミアム商品の「JAPAN CIDRE(ジャパンシードル)」(10月~、数量限定)も製造されている。希少種「ジェネバ」を一部使用した真っ赤なシードル。「すっきりとした甘みの中に適度な酸味と渋味がほどよいコクとアクセント」(資料より)を与えているのが特徴だ。真っ赤といっても着色料は使っていない。りんごの皮の赤だけで色をつける。特許をとった製法だ。
りんごの香りは、皮に多く含まれる。ニッカは、それを果汁に移すことにノウハウをもっている。皮の色を移すことにもつながったという。
リニューアルで「生」と「弘前」をアピール
リニューアルは2023年秋。ポイントは主に2つあり、「生」と「弘前」をアピールした点だ。
アサヒビールとニッカウヰスキーは2023年7月、弘前市へ企業版ふるさと納税を行った。「シードル製造に欠かせないリンゴ農家の支援のための補助労働力確保や弘前産リンゴおよびシードルのブランド価値向上」(ニュースリリースより)が目的。弘前への強い思いが感じられる行動だ。
「弘前でつくっていることを知っていただきたい」
こう強調して、瀧瀬工場長がさらに続ける。
「シードルは、どちらかと言うと、女性向け、晴れの日向け。そのようなイメージで販売されてきた。今回、ブランドを見直すなかで、弘前の四季の美しさ、自然の恵みを受けたりんごをそのまま使って、非加熱でりんごのやさしい味わいをそのまま生かしてつくっていることを伝えたい。温かく、やさしい気持ちになれるような、製品として認識もらいたい」
「晴れの日」の飲み物から、もっと日常的に飲んでもらいたいという思いが強く伝わってくる。