デザインにガンディーニが関与!?
アルシオーネのデザインは、北米富士重工の社長が、「ジャガーアスコットのようなクルマを作ってほしい」というリクエストがあったという。アスコットとは、イタリアの自動車工房『ベルトーネ』に在籍していたマルチェロ・ガンディーニ(1938~2024年)がジャガーXJ-Sをベースにデザインして1977年に発表されたコンセプトカーだ。ガンディーニはランボルギーニミウラ、カウンタック、ランチアストラトスをはじめ多くの市販車、コンセプトカーをデザインしたイタリアデザイン界の鬼才で、2024年3月13日に逝去、享年85。
アルシオーネは当時のどんなクルマよりもエッジをきかせたデザインで、今で言えばペキペキデザインのテスラサイバースポーツくらい異彩を放っていた。ただアルシオーネのデザインはインパクト狙いではなく、ウェッジシェイプのプロポーション、格納式のリトラクタブルヘッドライト、尖ったフロントノーズ、低いボンネット、傾斜のきつく寝たピラーはエアロダイナミクス(空力)を追求した結果だ。ちなみにアルシオーネは2024年3月時点でリトラクタブルヘッドライトを採用した最初で最後のスバル車だ。
そして日本車としては初めてCd値=0.29を達成。1980年代の空力ブームの主役であるアウディ80のCd値は0.29で、アルシオーネの1年後のデビューということを考えると富士重工の先見性、アルシオーネの先進性に驚かされる。またアルシオーネのデビュー後、日本車も空力追求が顕著になり、Cd値を大々的にアピールするようになったと記憶している。アルシオーネこそ日本車の空力のパイオニアだ。
インテリアもエクステリアに負けず劣らず斬新
インテリアでは、まず非対称で独特のスポーク形状のステアリングが斬新すぎる。仲間内ではピストル型スポークと呼んでいた。ガングリップタイプのATシフトレバーはカッコよかったし、ステアリング両サイドにスイッチ類を集積させたコントロールウイングは操作性にも優れていた。
傾斜したセンターコンソールなどインパネ全体のデザインも新しい造形で、質実剛健の富士重工からは想像もできない突き抜け方だった。絶壁インパネと揶揄されていた日産車とはえらい違い。オプション設定の液晶デジタルメーターが、初期のレースゲームの画面のようでちょっと子供っぽかったのがたまにキズ。