国宝や重要文化財指定の希少な仏像に会える室生寺
翌朝、向かったのは「女人高野」の別称を持つ室生寺。大和八木駅から東へ約30km。車で1時間ほどの宇陀市室生にある。
女人禁制だった高野山(和歌山県)に対し、女性の参詣が許されていたことからそう呼ばれ、女性の信仰を集めたという。そこには徳川幕府五代将軍徳川綱吉の生母、桂昌院(けいしょういん)が大きく関わっている。
桂昌院といえば、映画やドラマでは綱吉を溺愛する親として描かれることが多いが、当時衰退していた室生寺に巨額の浄財を寄進し、復興を進めたのが桂昌院だったのだ。現在も石楠花の季節や紅葉の頃になると多くの女性がお参りに訪れる。
室生寺の見どころは、数多く安置されている国宝や重要文化財指定の希少な仏像。金堂の中央に立つのは、平安時代初期に造立された国宝の中尊釈迦如来立像だ。特に朱色の衣の流れるような衣紋は、漣波式(れんぱしき)と呼ばれる独特のもので、この様式を室生寺様(むろうじよう)とも称される。
さらに、中尊釈迦如来立像の左右には文殊菩薩立像と薬師如来立像が、その前には十二神将立像が安置されている。これらはすべて重要文化財である。
圧巻だったのは、本堂正面の厨子に安置されている如意輪観音菩薩。あらゆる願いごとを叶えてくれる如意宝珠(にょいほうじゅ)と煩悩を打ち砕く輪宝(りんぼう)を持ち、女性的な優しさに満ちた表情を浮かべる姿に思わず引き込まれてしまう。
如意輪観音菩薩像は、一本の木材から像を掘りだした一木造(いちぼくづくり)で、継ぎ目がないのが特徴である。造立されたのは平安時代中期で、その技術力の高さにも驚いた。
諸願成就に功徳があるそうで、筆者もカメラマン、ライターとしてもっと大成できるようにと祈りを捧げた。