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子ども食堂の走り!?

期待を胸に「ソーメンチャンプル」(500円)を注文すると、まこと大盛り。カリっと火の通ったにんじんに、ハムの細切りがかもす旨みが、ソーメン自体の「油を得てつやつやと満ちる」食感とあいまって、箸をどんどんと進めていく。口中をアツアツの麺で満たす幸福感も間違いない。

「ソーメンチャンプル」(500円)
「ソーメンチャンプル」(500円)

厨房がすこし落ち着いたところで、「どうしてこんなにお値打ちなのに、ボリュームいっぱいなんですか?」とついつい聞いてしまった。

すると店主の神山長輝さんはぽつぽつと、「前はパーラーをやっていてね、お腹をすかせた子どものために、100円ランチを出していたんだよ」と語ってくれたのだ。

驚いた。いまで言う「子ども食堂」など、なかったころの話だ。大人になるまで苦労を重ねられた神山さんは、ストリート・チルドレンなど生活に困窮した子どもたちを見過ごせず、ただ同然でランチを振る舞っていたのだという。

「噂が噂を呼んじゃってね。隣町からも学生が来たりしたよ。でも出してやりたいからね。パーラーはもちろん赤字だったけど、高給の肉体労働を掛け持ちして補填して、寝る間も惜しんで働いたんだよ

そのころ常連だった子どもたちが、成人してから照れくさそうにお酒を飲みに来たりもするそうだ。それはどれだけうれしい報告だったことだろう。

思わず笑みをこぼしながら、最後に「お好み焼き」(600円/不定期提供)を注文した。

「お好み焼き」(600円)
「お好み焼き」(600円)

「それね、パーラーのときからの人気メニュー。山芋でよく膨らましてあるから、お腹がいっぱいになるんだよ

アツアツを口にして、はっとした。その頃の子どものように、「誰かのおかげでお腹を満たす幸せ」を、追体験するようだったのだ。

ほろ酔い加減になってのれんを出て、もういちど夜空を見上げた。

色濃くなった高い空は、いまも昔も変わらず沖縄を包みこむ。のんべえも子どもも分け隔てることなく、暮らしを見つめる夜空だろう。

■『飲兵衛倶楽部 かみさん』
[住所]沖縄県沖縄市照屋1-1-4
[電話番号]080-6482-5102
[営業時間]17時~24時
[休日]不定休
[支払方法]現金のみ
[交通]「那覇空港国内線ターミナル」から琉球バス具志川空港線「コザ」まで1時間、「コザ」から徒歩3分

取材・撮影/森田幸江

旅と銭湯をこよなく愛する、温泉ソムリエ&熱波師のライター。講談社の雑誌編集者、アメリカ大使館ライターを経て現職。趣味のプロ野球遠征からひと足伸ばし、ローカルな温浴施設の湯と人情、お風呂上がりの「ちょっと一杯」を求めて今日もどこかを股旅します。

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森田幸江
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