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『私をスキーに連れてって』はキャスティングが絶妙

『わたスキ』は今見返せば突っ込みどころ満載なのだが、当時の貧乏学生の私には何から何までがキラキラしていた。主演の原田知世さんのほか、原田貴和子さん、高橋ひとみさん、鳥越マリさんなどがいろんなタイプの女子を演じていて、どの子がいい? なんて友だちと話題になっていた。私は鳥越マリさん演じるちょっとお間抜けな恭世派だった。

しかし、私が『わたスキ』にハマったのはもうひとりの主演の三上博史さん。『華やかな誤算』(1985~1986年・TBS)で初めて見て以来憧れ、三上さんのタバコの吸い方、酒の飲み方などを真似ていた。彼が主演だったからこそ私の心に刺さるものがあった。体を回転させながら素早くビンディングを外すしぐさなどまぁいろいろ真似した。まぁ思い返せば赤面モノだが、そんな輩はスキー場に溢れていた。

1980年代中盤は今では考えられないくらいスキーブームで、『わたスキ』放映後はさらに競技人口を増やした

雪道での走りに衝撃!!

で、本題のセリカGT-FOUR。劇中には2台のセリカGT-FOURが登場。佐藤真理子(原田貴和子)は白、羽田ヒロコ(高橋ひとみ)は赤だ。そして運転席のドアを開けて、路面の雪をつまんで、「凍ってるね」、とお約束の言葉をつぶやいてフルスロットルで発進して雪道やゲレンデを激走するのだが、そのセリカGT-FOURはカッコよすぎた!! 雪の降らないところで生まれ育った私は雪道での走りなど想像もつかずひと目見て衝撃的だった。劇中ではGT-FOURを駆る女性2人とも腕自慢で、運転していない時とのギャップもナイスだった。

アマチュア無線、防水カメラも流行った

「わたスキ」の影響でブームになったモノ、売れたものなど多数あり、写真を撮る時に「ハイチーズ」ではなく「とりあえず」というのも「わたスキ」発祥。アイコムIC-μ2・IC-28のアマチュア無線、キヤノンAS-6(防水カメラで当時高価だった)も売れていた。クルマ関係で言えば、NAEBA、APPIなどのステッカーをクルマに貼る、そしてルームミラーにストップウォッチをぶら下げるのが流行った。

1986年2月に販売開始となったキヤノンAS-6。水深10mでも撮影できたため、スキーだけでなくマリンスポーツでも重宝した若者必携アイテム

スキー場で見る女性は3割可愛く見えた

あとはやはり主演の原田知世さんが演じた池上優。白いワンピースウェアにニット帽とサングラスという出で立ちだったが、”池上優もどき”がスキー場に大増殖。「夜目遠目傘のうち」というフレーズがあるが、ゲレンデ美人という言葉も流行り、当時はゲレンデで見ると女性は3割可愛く見える、とまで言われたものだ。

ユーミンは若者の教祖様

あと「わたスキ」と言えばユーミン(松任谷由実さん)。主題歌の『サーフ天国、スキー天国』をはじめ劇中の挿入歌の『恋人がサンタクロース』、『BLIZZARD』は映画の後も長らく冬の定番ミュージックとして君臨。

まぁ、恋愛の神様と呼ばれたこの頃のユーミンは若者にとって教祖様的存在で、絶大なるパワー、影響力を持っていた。ユーミンのCDはもちろん、カセットテープに録音して独自のオムニバスを作ってカーステ(カーステレオ)で彼女と聴く、というのも定番。

エクステリアデザインはフロントバンパーに埋め込まれた丸型フォグランプ程度。変更箇所はさりげない感じだが、そのオーラは凄い

雑誌のユーミンのインタビュー記事で、東名高速の乗り口近く、イエスタデー、プレンストンウッド、デニーズがあった”用賀アメリカ村”で若者を観察している、というのを読んで、もしかしたら俺も観察されていたかも、と思ったのは私だけじゃないハズ。結婚後用賀アメリカ村のあった近くに居を構えたため、2012年5月6日、最後の砦のデニーズの閉店を見届けたのも何かの運命を感じる。

スキーに行くならヨンクの先駆け

スキーブームをさらに加勢したこの作品でのセリカGT-FOURにより、「スキーに行くならヨンク」というのが大学生の間では合言葉のようになっていた。残念ながら私をはじめ私友人はクルマを持っていなかったため、格安で有名だった新宿西口発のスキーバス(サミーツアー)だった……。

映画で人気となり、憧れの存在となったGT-FOURだったが、若者の間でバカ売れしたかと言えばそうでもなかったように思う。でも、このクルマほど若者(特に大学生)をワクワクさせてくれたクルマはなかったのではないだろうか。

今も昔も映画やドラマに登場したクルマの影響は絶大だが、セリカGT-FOURほど若者を熱狂させたクルマはない。実際には販売に大きくは貢献しなかったかもしれないが、イメージ戦略として大勝利!!

【セリカGT-FOUR主要諸元】
全長4365×全幅1690×全高1295mm
ホイールベース:2525mm
車重:1350kg
エンジン:1998cc、直列4気筒DOHCターボ
最高出力:185ps/6000rpm
最大トルク:24.5kgm/4000rpm
価格:297万6000円(5MT)

【豆知識】
6代目ファミリアは、赤いファミリアブームを巻き起こした5代目のキープコンセプトのデザインで登場。最大のトピックが日本車初となるフルタイム4WDを搭載したことだ。軽量コンパクトなハッチバック+4WDは軽快なハンドリング、天候、路面コンディションに左右されない安定性が魅力で、日本車の4WDブームの先駆けとなった。欧州ではマツダ323の車名で販売されていて、欧州のマツダ323をベースとしたラリーマシンがセリカ同様にWRCにも投入され活躍した。

市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。

写真/TOYOTA、ベストカー

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市原 信幸
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