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「ハート型のサーモン乗せホタテ貝のムース」が彩る夕食会

招待者は、まず赤坂御所の「檜の間」で食前酒のもてなしを受けた。そこに皇太子浩宮さまが雅子さまご一家をお連れして、グラスを片手にしている一人ひとりに紹介された。その日の雅子さまは、エメラルドグリーンのドレスに、パールのイヤリングとネックレスをつけた装いである。

「小和田雅子でございます。よろしくおねがいします」

緊張気味の雅子さまは深々と一礼し、豊富な話題でやりとりされた。上品で控え目な物腰は、天皇家の方々から好感を持って受け入れられた。

親族への紹介がすんだところで、東山魁夷の「日月四季図」の壁画が飾られた「日月(じつげつ)の間」に移動。午後7時より夕食会が始まった。

関山(カンザン)

夕食会のメニューは、フランス料理のコースである。

前菜は、スモークサーモンが乗ったホタテ貝のムース。
ポタージュスープとサラダ。
メインディッシュの魚料理は、白身魚とカキのフリッター。
肉料理は、チキンソテー。
デザートとして、メロンとイチゴババロアにコーヒー。

最初の料理は、ハート型にカットされたピンク色のスモークサーモンがホタテ貝のムースの上に愛らしく乗っていた。天皇陛下と美智子さまが、雅子さまをあたたかく迎え入れようとされるお心が感じられる一皿。初々しい婚約者たちをお祝いする、粋な演出であった。

「日月の間」には丸テーブルが6卓置かれ、出席者は5~6人ずつに分かれて着席した。上下の隔たりをつくらない配慮だったのだろう。主催者からの挨拶も乾杯もなく、会はごく自然に始まった。動物好きの雅子さまは、池田夫妻が経営する牧場に興味津々で、会話が弾んでいた。天皇陛下と美智子さまのテーブルで会話を楽しんでいたのは、雅子さまのご家族だった。

部屋を移してのコーヒータイムは予定を大幅に過ぎ、別れを惜しむように続いた。夜も更けた10時過ぎにすべての親族を見送ってから、雅子さまは帰宅された。

美智子さまは、長年の間、陛下とともに「あたたかいホーム」をつくろうと努めてこられた。家族親族が集まって、息子の嫁となる人を囲んでの食事会は「あたたかいホーム」の実現であった。大切に育てた娘を嫁に出すお相手の両親の気持ちを慮った、まさに心和む食事会であったことだろう。このときから30余年がたち、今、天皇陛下と雅子さまはご自分たちの「あたたかいホーム」を築いておられる。(連載「天皇家の食卓」第18回)

インスタグラムの宮内庁公式アカウント

文・写真/高木香織

参考文献/『美智子皇后と雅子妃 新たなる旅立ち』(講談社)、『美智子皇后 みのりの秋(とき)』(文春文庫)、『天皇家の姫君たち 明治から平成・女性皇族の素顔』(文春文庫)以上、渡辺みどり著、『新しい時代とともに――天皇皇后両陛下の歩み』(宮内庁侍従職特別協力、毎日新聞社)

高木香織
たかぎ・かおり。出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、『日めくり31日カレンダー 永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。

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高木 香織
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