SNSで最新情報をチェック

朽ちてゆくアーチ橋

糠平湖は、降水量と水力発電の水利(水位低下)によってその姿を大きく変える。例年、糠平湖の水位が下がるのは1月ころで、その凍結した湖面にタウシュベツ川橋梁は姿を現す。それ以降は、雪解け水や降雨の影響によって糠平湖の水位は上昇し、例年9月から10月ころになると橋梁は水没してしまう。

毎年、水没と出現を繰り返す橋梁は、水圧と結氷期の凍結と融解とを繰り返すことで、損傷は年々進行し続けている。一部、橋の外側が崩れた箇所からは、内側の詰め石が崩落しているところもあるが、アーチ橋そのものが崩壊するには至っていない。「北海道遺産」に認定されながらも、“条件の悪さ”から「保存措置の対象外」とされているのが実情だ。

崩壊した姿も痛々しいタウシュベツ川橋梁のアーチ橋部。あと何年、この姿を見ることができるのであろうか=2015(平成27)年9月22日、糠平湖(北海道河東郡上士幌町)

見学するには

タウシュベツ川橋梁を見学するには、いくつかの方法がある。一番手ごろなのが、糠平湖の対岸沿いを走る国道273号沿いの湖畔(ぬかびら温泉郷から旭川方面に8キロメートル進んだあたり)に設けられたタウシュベツ展望台(駐車場あり)からの眺望だ。

もっと間近で見学したいとなれば、橋梁の目の前まで行くことも可能だが、国道273号から分岐している糠平三股林道(毎年11月以降は通行止め)を経由する必要があり、この林道は1日あたりの通行台数の制限もあり、事前に「タウシュベツ川橋梁 林道ゲート通行鍵 WEB予約ページ」(https://kamishihoro.info/key/)を通じて、通行許可を得る必要がある。この林道を約4キロメートル進んだところからは、旧国鉄士幌線の廃線跡を徒歩で橋梁のそばまで行くことができる。なお、周辺にはヒグマが棲息しており、廃線跡を徒歩で進む際にもヒグマへの注意喚起が必要だ。

もっと気軽に見学したい人向けには、有料のガイド付きツアーもある。グリーンシーズンは、4月のゴールデンウイークから水没する10月ころまで実施しており、詳しくは「ひがし大雪自然ガイドセンター」(http://www.guidecentre.jp/)のホームページ を参考にしてほしい。このガイドツアーは例年人気があり、早めの予約をオススメする。なお、このガイドツアーとは別に、旅行会社主催のツアーも実施されているが、こちらは各旅行会社へ問い合わせてほしい。

国道273号沿いにある「タウシュベツ展望台」からの眺望=2010(平成22)年5月5日、北海道河東郡上士幌町、写真提供/NPOひがし大雪自然ガイドセンター
林道から先は、旧国鉄士幌線の廃線跡を歩いて行くと目の前に糠平湖の景色が広がる=2015(平成27)年9月22日、糠平湖(北海道河東郡上士幌町)
水のない時期には、湖底まで降りて間近に見学することができる。それにしてもアーチ橋の損傷は痛々しい=2023(令和5)年7月11日、糠平湖(北海道河東郡上士幌町)、写真提供/NPOひがし大雪自然ガイドセンター

文・写真/工藤直通  

くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元日本鉄道電気技術協会技術主幹。芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、鉄道友の会会員。

icon-gallery
icon-prev 1 2
関連記事
あなたにおすすめ

関連キーワード

この記事のライター

工藤直通
工藤直通

工藤直通

最新刊

全店実食調査でお届けするグルメ情報誌「おとなの週末」。9月13日発売の10月号は「ちょうどいい和の店…