朽ちてゆくアーチ橋
糠平湖は、降水量と水力発電の水利(水位低下)によってその姿を大きく変える。例年、糠平湖の水位が下がるのは1月ころで、その凍結した湖面にタウシュベツ川橋梁は姿を現す。それ以降は、雪解け水や降雨の影響によって糠平湖の水位は上昇し、例年9月から10月ころになると橋梁は水没してしまう。
毎年、水没と出現を繰り返す橋梁は、水圧と結氷期の凍結と融解とを繰り返すことで、損傷は年々進行し続けている。一部、橋の外側が崩れた箇所からは、内側の詰め石が崩落しているところもあるが、アーチ橋そのものが崩壊するには至っていない。「北海道遺産」に認定されながらも、“条件の悪さ”から「保存措置の対象外」とされているのが実情だ。
見学するには
タウシュベツ川橋梁を見学するには、いくつかの方法がある。一番手ごろなのが、糠平湖の対岸沿いを走る国道273号沿いの湖畔(ぬかびら温泉郷から旭川方面に8キロメートル進んだあたり)に設けられたタウシュベツ展望台(駐車場あり)からの眺望だ。
もっと間近で見学したいとなれば、橋梁の目の前まで行くことも可能だが、国道273号から分岐している糠平三股林道(毎年11月以降は通行止め)を経由する必要があり、この林道は1日あたりの通行台数の制限もあり、事前に「タウシュベツ川橋梁 林道ゲート通行鍵 WEB予約ページ」(https://kamishihoro.info/key/)を通じて、通行許可を得る必要がある。この林道を約4キロメートル進んだところからは、旧国鉄士幌線の廃線跡を徒歩で橋梁のそばまで行くことができる。なお、周辺にはヒグマが棲息しており、廃線跡を徒歩で進む際にもヒグマへの注意喚起が必要だ。
もっと気軽に見学したい人向けには、有料のガイド付きツアーもある。グリーンシーズンは、4月のゴールデンウイークから水没する10月ころまで実施しており、詳しくは「ひがし大雪自然ガイドセンター」(http://www.guidecentre.jp/)のホームページ を参考にしてほしい。このガイドツアーは例年人気があり、早めの予約をオススメする。なお、このガイドツアーとは別に、旅行会社主催のツアーも実施されているが、こちらは各旅行会社へ問い合わせてほしい。
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元日本鉄道電気技術協会技術主幹。芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、鉄道友の会会員。