いまも鳥瞰図は制作されているのか
鳥瞰図が最後に制作されたのは、1987(昭和62)年5月に佐賀県で走ったお召列車に備え付けられたものといわれる。平成の時代になっても、御料車を使用したお召列車は何度か運行されているが、長距離の移動は飛行機や新幹線となり、乗車したとしても距離が短いことが多く、結果、乗車時間も短くなった。そのため、鳥瞰図の必要性がなくなったと伝え聞く。私鉄では、昭和の時代にごくわずかだが制作されている。
現代では、「Google Earth(グーグルアース)」などで容易に地形を確認することができる時代である。時代の移り変わりとともに、お召列車での鳥瞰図の役目は終わりを迎えたのかもしれない。
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会皇室担当写真記者。1970年、東京都生まれ。10歳から始めた鉄道写真をきっかけに、中学生の頃より特別列車(お召列車)の撮影を通じて皇室に関心をもつようになる。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物を通じた皇室取材を重ねる。著書に「天皇陛下と皇族方と乗り物と」(講談社ビーシー/講談社)、「天皇陛下と鉄道」(交通新聞社)など。