年度の終わりの3月といえば、クルマを買うのに最適な時期といわれている。自動車メーカーや販売会社が決算の数字向上を狙って、様々なサービスを行うためだ。しかし近年は、自動車の納車遅延など様々な理由で、サービス内容が変わってきているという。3月狙い撃ちでの購入で、値引きやサービスは期待できるのだろうか?
画像ギャラリー年度の終わりの3月といえば、クルマを買うのに最適な時期といわれている。自動車メーカーや販売会社が決算の数字向上を狙って、様々なサービスを行うためだ。しかし近年は、自動車の納車遅延など様々な理由で、サービス内容が変わってきているという。3月狙い撃ちでの購入で、値引きやサービスは期待できるのだろうか?
サービスが手厚い3月の決算期と9月の中間決算期
メーカーや販売会社は、クルマの販売を促進する目的で、いろいろなサービスを行う。例えば多くのユーザーが利用する残価設定ローンに低金利を設定したり、ディーラーオプションのサービス装着も実施する。値引きもサービスの柱になる。これらのサービスは、常に同じように行うわけではない。時期によってサービス内容が変わる。
最もサービスが手厚い時期は、3月の決算期と9月の中間決算期だ。主に販売会社の決算を好転させるため、値引き額を増やしたりサービス内容を手厚くする。
ただし決算期のサービスは、3月中や9月中に登録(軽自動車の場合は届け出)できることが条件だ。決算月に登録や届け出をしないと、販売会社などの決算に反映できないからだ。
2010年頃までは国内販売総数の16%前後が3月登録
そして今は車両の納期が全般的に長い。新型コロナウイルスの被害が深刻だった時期に比べると短縮されたが、それでも新型車を中心に3か月から6か月の車種も多い。
そうなると3月中に登録や届け出をするには、前年の9月から12月頃に契約せねばならない。販売店では以下のように説明した。「納期が長くなり、以前に比べると、決算期に契約件数が急増する傾向は薄れた。それでも売れ筋の軽自動車やコンパクトカーでは、決算期に向けて在庫車を予め用意しておく。以前ほど売りまくる状態ではないが、好条件で販売することはある」。
ちなみに2010年頃までは、国内販売総数の16%前後は、3月に登録や届け出が行われていた。それが2023年は12%だ。納期が長くなったことで、決算期の販売比率が下がり、平均化されてきた。
販売報償金が減少し、有利な条件が引き出しにくくなった
またメーカーから販売会社に対して行われる、決算期の支援が薄れたことも影響を与えている。以前は販売報償金が豊富に支給され、販売店ではこれを原資に値引きを拡大させた。
ところが最近は販売報償金が減り、昔のような大幅値引きも難しい。「決算期は値引きが増えてオトク」という認識も薄れ、これも決算期の販売比率が下がった理由だ。
販売報償金が減った背景には、メーカーの国内市場に対する冷遇がある。1990年以降、日本におけるクルマの売れ行きが下がると、日本のメーカーは海外の販売比率を高めていった。これに伴って国内市場の重要度が下がり、販売報償金も減っている。その結果、ますます売れ行きが下がる悪循環に陥った。
それでも3月購入にはメリットがある
それでも3月購入には今でもメリットがある。例えば年末に購入すると、翌月には愛車が「前年式」になってしまう。数年後に売却する時の金額は、車種やグレード、走行距離、そして年式によって決まるため、年末に登録や届け出を行うと、使用期間の割に年式が古くなって不利を招く。その点で年明けに登録や契約を行うと高値で売却しやすいから、結局は3月決算期の購入に落ち着く。
そうなると今でも最もオトクに買える時期は3月決算フェアだが、前述の通り、3月中の登録や届け出が前提だ。欲しい車種の納期を予め確認したい。購入する車種が売れ筋の軽自動車やコンパクトカーであれば、在庫車もそろっているから、3月上旬に好条件で契約して下旬に登録や届け出する買い方もある。販売店に尋ねてみると良いだろう。
文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
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