クラッチを使いながら変速を自ら行うのがMT(マニュアルトランスミッション)車だが、日本国内ではどんどん保有率がさがり、いまや1~2%ほどしかない。これに伴い、MTが選べる国産車の設定も少なくなっている。それでもあえてMTを選びたいユーザーに、おすすめの高コスパ車をご紹介しよう!!
画像ギャラリークラッチを使いながら変速を自ら行うのがMT(マニュアルトランスミッション)車だが、日本国内ではどんどん保有率がさがり、いまや1~2%ほどしかない。これに伴い、MTが選べる国産車の設定も少なくなっている。それでもあえてMTを選びたいユーザーに、おすすめの高コスパ車をご紹介しよう!!
1985年頃までは50%ものクルマがMT車だった!?
最近は5速、あるいは6速のMT(マニュアルトランスミッション)車が減っている。新車として販売される乗用車のMT比率は、1985年頃までは50%を上まわったが、1995年頃には20%に減り、2000年以降は10%以下だ。最近はわずか1~2%に留まる。今はストロングハイブリッドが増えた影響もあり、MTの車種数が減って販売はますます難しくなった。
しかし2023年における第一種普通運転免許の取得状況を見ると、AT限定の比率は68%に留まる。32%のユーザーは、MT車の運転が行えるのだ。AT限定にしなかった理由として、例えば仕事でトラックを運転する時の対応などもあるだろう。32%のユーザーすべてがMT車の購入を意図しているわけではないが、運転できる能力と資格は備えている。
また今はフルハイブリッドの普及もあり、MTを選べる新車が減ったが、欲しいユーザーの数はそこまで減少していないだろう。そこで運転が楽しく、購入しやすいMT車を取り上げたい。価格は300万円未満を条件とした。
軽自動車/ホンダ N-ONE RS(216万400円/6速MT)
空間効率の優れた軽自動車だが、プラットフォームを共通化したN-BOXやN-WGNに比べると全高が低い。2WDの全高は、立体駐車場を使いやすい1550mm以下だから、重心高も下がってカーブでは左右に振られにくい。エンジンはRSではターボを搭載している。
6速MTのシフト感覚は正確で、運転の楽しさを一層盛り上げている。エンジン排気量や機能の割に価格は高いが、クルマ好きには魅力的な軽自動車だ。
コンパクトカー/スズキ スイフト MX(192万2800円/5速MT)
スイフトの標準グレードはベーシックなコンパクトカーだが、中級グレードのMXには5速MTが設定される。その目的は燃費の向上だ。直列3気筒1.2Lマイルドハイブリッドを搭載して、WLTCモード燃費はフルハイブリッドに迫る25.4km/L。
CVT(無段変速AT)の24.5km/Lを上まわった。車両重量は920kgと軽く、スポーティグレードではないが運転感覚が楽しい。
コンパクトカー/マツダ2 XDスポーツ+(240万2400円/6速MT)
マツダ2は外観のカッコ良さや走行性能に重点を置いて開発された。エンジンも直列4気筒1.5Lガソリンに加えて、1.5Lクリーンディーゼルターボも設定する。
ディーゼルの6速MTの最大トルクは、2Lガソリンエンジンを超える22.4kg-mで、実用回転域の1400~3200回転で発生するため、運転感覚が力強い。
6速MTのシフト感覚も良好だ。実用回転域の高い駆動力を生かして、2000回転付近でシフトアップを続けながら速度を高めていくと、高回転域まで回すガソリンエンジン車とは違う楽しさを味わえる。
コンパクトカー/トヨタ ヤリス1.5Z(205万円/6速MT)
ヤリスでは直列3気筒1.5Lのノーマルガソリンエンジン車に6速MTを設定する。最上級グレードの1.5Zでも、車両重量は1000kgと軽く、6速MTを駆使すると機敏な運転感覚を味わえる。
また1.5Zの6速MTは、最上級グレードながら、価格を軽自動車のN-ONE・RSよりも安い205万円に抑えた。この価格で、1.5Lエンジンに加えて、3灯式フルLEDヘッドランプ、ルーフスポイラー、合成皮革による上級シート生地、ディスプレイオーディオなどが標準装着される。買い得度も魅力だ。
スポーツカー/マツダ ロードスター S(289万8500円/6速MT)
生粋のスポーツカーとあって運転感覚は抜群に楽しい。しかも車両重量が1010kgと軽く、自分の手足のように操れる。直列4気筒1.5Lエンジンの動力性能も適度だから、無理な走り方をしなくてもフルパワーを引き出すことが可能だ。
そしてSは6速MTながら、後輪側のスタビライザー(ボディの傾き方を制御する足まわりのパーツ)やボディ剛性を高めるトンネルブレースバーを装着していない。一般的には欠点と受け取られるが、これらの違いにより、走り方によっては、カーブを曲がる時に後輪の横滑りが緩やかに発生する。
この時の挙動は、1989年に発売された初代ユーノスロードスターを思い起こさせ、当時を知るドライバーには無性に懐かしく感じられる。
文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、Adobe Stock(アイキャッチ画像:sigemin@Adobe Stock)