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「お嫁に来たときは義母が納豆を作っていました」

最後は明日仕込む大豆を洗う。水を入れてかき混ぜると泡立つが、「これは大豆のアクなんです」と翼さん。

泡がなくなるまで水を替えてきれいに洗い、ひと晩ほど浸けておく。浸水時間も気温の変化や大豆の質で細かく調整するという。蛇口から出るのは山の上から引いた天然水だ。山の澄んだ空気と水が大事。風土が育むここだけの味なのだ。

内田家は代々、あか牛を育てる繁殖農家だったという。山頂に開けた土地は放牧場だったのだ。それが野菜農家となり、30年前に一念発起して納豆工房をスタートさせた。この地域は昔から各家庭で納豆を作ってきた歴史がある。内田家でも時々作って出荷していた納豆が評判となり、もっと作って欲しいと求められたことがきっかけになった。

「昔は山に住む人たちの貴重なたんぱく源だったのでしょうね。私がお嫁に来たときは義母が納豆を作っていました」と史子さん。

大豆は夏の初めに種をまき、晩秋に収穫する。無化学肥料、無農薬で育てている。最初は苦労したが、今は病気にも虫にも強くなったという。畑に案内してもらうと、太陽に照らされてのびのびと育った大豆が風に揺れていた。

在来種の「八天狗」は中粒だが、去年は出来がよすぎて大粒の「フクユタカ」に迫るサイズに育ってしまったとか。

『森ノリノ』手ですくっているのが八天狗。少し色黒で野性味がある

ちなみに工房の名前の由来を聞くと「リノはハワイ語で光です。山と海を意識して、海(島)の言葉を入れてみたくて」と史子さんはチャーミングに笑う。

納豆のネーミングもフクユタカの「海想う」、八天狗の「山笑う」と、山の上から南国熊本の海へと思いを馳せるイメージが伝わってくる。

『森ノリノ』(右手前)「海想う」(経木入り80g)、(右奥)「海想う」(40g×2)各280円、(左)「山笑う」(40g×2タレ付き)290円

「ここより少し上の方に行くとね、海がキラキラして見えるんですよ」と克彦さんもうれしそうに付け足した。

実は「よかったら」とお誘いを受け、我々取材チームは図々しくもお昼ご飯をご馳走になった。いただいたのは、お手製のざるうどん。上にのせた納豆は味も香りもやさしく、噛みしめると愛情と豆の風味をたっぷり感じられた。

『森ノリノ』史子さん手作りの納豆ざるうどん。自家製の納豆と野菜たっぷりで最高

そして我らは遅く来た夏休みのようなひと時を内田家の居間で過ごし、「また来てくださいね」と史子さんに見送られ、山道のドライブへと再び挑んだのであった。

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おとなの週末Web編集部
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