「湯の花」が浮いている!まさに温泉情緒
中学2年まで、大分県別府市の海岸沿いにある旅館の息子として育った入居中の私の知り合いも、「入った瞬間に『いい風呂だ』と実感した」と絶賛。この温泉の存在が入居の決め手になったという。
今回は入居者のゲストとして、ゲストルームに宿泊した。夜9時から10時までの1時間だけゲストも大浴場に入ることができる。脱衣所に整然とカゴが並び、洗面スペースにはドライヤーが設置されている。温泉旅館のしつらえとほぼ同じ。温泉宿に来たかと錯覚する。
女風呂にはL字型の石の湯船と縁に木を貼った湯船がある。湯船の縁に座って出入りしたり、半身浴をしたりする段差がぐるりと設けられている。お湯は無色透明で一見、特徴がなさそうに思えるが、pH9.5のアルカリ性単純温泉はいわゆる「美肌の湯」。湯船に浸かって肌を触わると、つるつるとした感触。
よく見ると、白くて細かい湯の花が浮いている。循環ろ過器を通していない、かけ流しの温泉である証拠だ。高齢者向けの施設の場合、衛生面が重視されることの方が多いだろうが、この施設を開発した担当者の中に温泉好きがいたのかもしれない。湯船の清潔感とともに、温泉情緒や風情も大事にされていて、ここの入居者は幸せだなと思った。
湯船はまさに温泉旅館の風情、西鉄運営の11施設で「かけ流し」はココだけ
湯船は3つに分かれていて、デジタル温度計は39.8度、40.1度、40.3度を示していた。湯船はまさに温泉旅館の趣だが、ちょっとだけ違うのは手すりが多めだということ。高齢者向けの施設だから、浴槽への出入り口以外に湯船の中にも手すりが設置してある。金属製の手すりが多くなると空間が味気なくなるのは否めないが、そこは仕方ない。
洗い場では正面・左右両方に手すりがついていて、湯船には非常ボタンもある。何かあった場合にすぐに連絡がいくシステムだ。お湯のよさと機能面、両方を確保しつつ、よいバランスが保たれているように感じた。せっけんのように皮脂や汚れがよく落ちる泉質ながらうるおい感もあって、入浴後は、薄着でいいくらいよく温まった。
西鉄が運営する全11施設の中でもかけ流しの温泉をもつのはここだけである。
掘り進めていくうちに十分な湯量が確保できたことから、「かけ流し」で提供しているが、「万一、湯量や法制度に変化があった場合、柔軟に対応できるよう、循環ろ過するための配管や設備を導入する際に必要となる機械室も備えてはいる」(支配人)というから、状況に応じてお湯の給湯・排水方式は変更できる仕様とのこと。頼もしい話だ。