南極大陸にあるロシアのボストーク基地で採取された氷柱の分析により、近くの大陸から大量の砂が飛んだ時は大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が低く、地球は寒かったのです。砂が少ない時はCO2濃度が高く、地球は暖かかったのです。
近くの大陸とは、そうです、オーストラリアです。オーストラリアの鉄を含んだ砂によって、地球は暖かかったり寒かったりするのです。それは、光合成をする南極海の植物プランクトンの量によってCO2濃度が高くなったり低くなったりするからです。南極海って、地球の肺のような役目をしているんですよ。
化石燃料と温暖化
地球上に初めて現れた植物の元祖、シアノバクテリアをこの目で見たのです。その塊であるストロマトライトが光合成で酸素を放出しているのも見たのです。生まれたばかりの地球を囲む大気のほとんどは二酸化炭素(CO2)でした。
植物の光合成の力で大気中の酸素は21パーセントになりました。30億年もかかって、です。では炭素(C)はどこへ行ったのでしょう。
たとえば木が成長すると、太い幹になりますよね。枝や葉もできます。これは全部炭素なのです。やがて、火山の爆発や地殻変動などによって土砂に埋まって化石のようになったのが石炭です。
動物の体も、ほとんど炭素でできています。地球の7割は海ですよね。海には光合成によって植物プランクトンが大量に発生します。これを動物プランクトンが食べて、さらにイワシ、マグロ、シャチ、クジラと食物連鎖が続きます。生き物は全部死んで、海底に落ちてゆき地底に埋まります。こうしてできたのが石油です。
石炭や石油を化石燃料といいますよね。化石燃料をまだ使わなかったときの大気中のCO2濃度は約280ppmでした。現在は400ppmぐらいです。人類最大の問題といわれる地球温暖化は、人類が化石燃料に手をつけたからです。
…つづく「「こんなうまいものがあるのか」…20歳の青年が、オホーツクの旅で《ホタテ貝の刺し身》に感動、その後はじめた「意外な商売」」では、かきじいさんが青年だったころのお話にさかのぼります。
連載『カキじいさん、世界へ行く!』第16回
構成/高木香織
●プロフィール
畠山重篤(はたけやま・しげあつ)
1943年、中国・上海生まれ。宮城県でカキ・ホタテの養殖業を営む。「牡蠣の森を慕う会」代表。1989年より「海は森の恋人」を合い言葉に植林活動を続ける。一方、子どもたちを海に招き、体験学習を行っている。『漁師さんの森づくり』(講談社)で小学館児童出版文化賞・産経児童出版文化賞JR賞、『日本〈汽水〉紀行』(文藝春秋)で日本エッセイスト・クラブ賞、『鉄は魔法つかい:命と地球をはぐくむ「鉄」物語』(小学館)で産経児童出版文化賞産経新聞社賞を受賞。その他の著書に『森は海の恋人』(北斗出版)、『リアスの海辺から』『牡蠣礼讃』(ともに文藝春秋)などがある。2025年4月3日逝去。