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湖に漁師歌が響く

この季節、深夜まで明るいのです。腹ごなしに数人乗りのボートをチャーターして、湖に出ました。なんだか、気仙沼の家に帰ったような気分です。大竹君と、一緒に来ている大阪府木材連合会の会長、津田潮さんに宮城県の漁師歌、斎太郎節を披露しました。

「お前踊れ」と妻を促しました。

「松島〜の~」夕焼けの湖に、宮城の漁師歌が響いていました。

20年も通ってオオカミの写真を撮り続けている大竹君の気持ちを尊重し、次の日は鉄とカキから離れた一日を過ごすことになりました。何度か訪れているコースだそうですが、ガイドを雇う決まりになっているのです。2人のガイドの乗るライトバンの屋根には、2そうのカヌーが積まれていました。まるで気仙沼市の舞根湾そっくりの湖岸に着きました。

北アメリカ大陸の北緯45度から60度にかけて広がるノースウッズの森は、南アメリカのアマゾン、シベリアのタイガに匹敵する世界最大級の原生林です。しかも高い山脈はなく、見渡す限り針葉樹を中心とする森林が広がっています。

およそ一万年前の最後の氷河期が残した無数の湖が点在し、ミネソタ州ナンバーの車には「10,000lakes(1万の湖)」と記されているほどです。

ガイドが付いたカヌーに妻と乗り込みました。若いころ、ノリの養殖をしていてダンベカッコ(細長い小型の木造船)を自由自在に乗り回していたわたしにとって、新鮮味はありません。オールを操ってどんどん進むと、ガイドは驚いています。それはそうでしょう、こちらは本職の漁師なんですから。

30分ほど進むと大きな岩の壁が切り立っている岸辺にカヌーを寄せました。赤っぽい絵の具で、動物や鳥の絵が描いてあるのです。鉄の粉に動物の脂を混ぜた顔料を使っているそうです。世界最大の鹿といわれるムース(ヘラジカ)やクマ、ノースウッズの水辺を象徴するハシグロアビ(カナダの1ドルコインに刻印されている)という鳥の絵などで、先住民が描いたものです。

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高木 香織
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