「特製上海焼きそば」誕生のきっかけは手塚治虫
そのひとつが「特製上海焼きそば」だ。実はこれ、漫画家の手塚治虫氏の要望で誕生した味。事務所が近いことからよく出前を利用したそうで「ある日、先生にばったりお会いして。そしたら『悪いんだけど今度焼きそばに八宝菜を乗せてくれませんか。豚肉より鶏がいいなあ、キクラゲもいいねえ』と好きな具を言われたんです。
親父に伝えたら『首相官邸時代からムチャぶりには慣れてる(笑)』と先生専用に作った。先生亡き後は作ってなかったけど、手塚プロダクションの方から店で出しては?と声を掛けられ、13年前にメニューに加わりました」
特製上海焼きそば 1780円
具は鶏肉、エビ、キノコ類など盛りだくさん。店の基本である鶏ガラと豚骨のスープに醤油などで味を調える。麺は片面をカリッと焼いて中はふわっと感を残すのが特徴だ。ゴロゴロ入った具はそれだけでスペシャルな味、これでチビチビ飲んで最後に麺……が常連に定番らしい。
現在は3代目の隆正さんと共に厨房に立ち、初代から受け継ぐ味を基本に時代に合わせたメニューも考案している。居酒屋的な小皿料理もあって、これが楽しいったらない。暖簾を守ることは、昔の味を大切に残すことと同時に、新しい味に挑戦することでもあるんだなあ。
「それと。どんなに忙しくてもごまかさず、ひとつずつ丁寧に、期待を裏切らないこと。心掛けるのはその1点です」
これこそ飲食の正義。この店が愛され続ける最大の理由なのだと思う。
『一番飯店』@高田馬場
[住所]東京都新宿区高田馬場4-28-18
[電話]03-3368-7215
[営業時間]11時半~15時半、17時~22時
[休日]火・水
[交通]JR山手線ほか高田馬場駅早稲田口などから徒歩6分
撮影/鵜澤昭彦(兆徳、一番飯店)、浅沼ノア(餃子の王さま)、取材/肥田木奈々
▶おとなの週末2025年2月号は「醤油ラーメン」
※2024年12月号発売時点の情報です。
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