商品評価は「いいよ」「ビミョー」の二択 2兆円企業へ駆け上がったドン・キホーテ流「顧客の本音」の取り込み方 

マジボイス

充実した品揃えと魅力的な価格で、消費者を楽しませてくれている総合ディスカウントストアのドン・キホーテ。「ド」と大きく書かれているPB商品(情熱価格)を同社では“ピープルブランド”と呼び、プライドをかけた商品開発で生み出している。こだわりが見える同社のモノづくりには、秘訣があった。「顧客の本音」を取り入れて躍進を続ける2兆円企業の取り組みとは。

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充実した品揃えと魅力的な価格で、消費者を楽しませてくれている総合ディスカウントストアのドン・キホーテ。「ド」と大きく書かれているPB商品(情熱価格)を同社では“ピープルブランド”と呼び、プライドをかけた商品開発で生み出している。こだわりが見える同社のモノづくりには、秘訣があった。「顧客の本音」を取り入れて躍進を続ける2兆円企業の取り組みとは。

「みんなの75点より誰かの120点」

個性あふれるPB商品が並ぶドン・キホーテ(以下、ドンキ)で、食品をメインにPB企画開発を行っている野木敬郎さんは、「“ドンキらしさ”が見える、独自性のあるものを作っていきたい」と話す。

例えば、合言葉は「みんなの75点より誰かの120点」で、スパイスがきいたフライドチキンの皮やアメリカンドッグのカリカリ部分をおかずにしたお弁当など、尖ったラインナップを誇る弁当・惣菜ブランドの「偏愛めし」は、“ドンキらしさ”の最たるものだろう。

顧客最優先主義が形として現れた「マジボイス」

ドンキを運営するPPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールティングス)は、企業原理として “顧客最優先主義”を掲げている。その主義がひとつの形として現れているのが、オリジナル電子マネーアプリ「majica(マジカ)」内のサービス「マジボイス」だ。

「正直レビュー」と「おしえて掲示板」の2つの主要コンテンツを軸に、“みんなの声で、ぜんぶが変わる!?”がコンセプト。アプリ会員は「いいよ」と「ビミョー」の二択での商品評価に加え、テキストで商品への要望やアイデア、利用店舗への気づきなどを直接書き込むことができる。2023年11月の運用開始から約1年で、商品評価とコメント件数の合計は160万件を超えた。

「マジボイス」はもともと、2021年2月より展開されていた情熱価格商品に対する特設サイト「ダメ出しの殿堂」から移行したものだ。

「マジボイス」のトップ画面

ビミョーが断トツだった「無添加からだ想いラップ」

例えば、食品包装用のフィルム「無添加からだ想いラップ」は、マジボイス開始から半年の時点で、「ビミョー」が断トツで付いていた商品だ。顧客が満足していなかった理由は、切れにくかったこと。

2024年10月には、その点を改善したリニューアル商品を発売し、「いいよ!」率が大きく改善した。

「無添加からだ想いラップ 22cm×50m」
いいよ率は、旧商品:26% → 新商品:55%

「無添加からだ想いラップ 30cm×100m」
いいよ率は、旧商品:32% → 新商品:59%
※どちらも2025年2月4日時点

筆者の自宅にある新旧の「無添加からだ想いラップ」。無添加だからかくっつきにくいなどはあるが、食品に使うものだから安心感がある

辛辣なコメントに「ありがたい」

「マジボイス」への書き込みを見ると、みんな本当に遠慮一切なしで感想を書いている印象。中には、もしも自分が商品開発者だったら正直なところ目を覆いたくなってしまうのでは、というような辛辣なコメントも並ぶ。それでも開発担当者たちは「お客様の声を直接聞けるのはありがたい」と口を揃える。

コメントへは「ご意見ありがとうございます!」というスタンプが押されるので、書き込んだ人も自分の声に目を通しているのだと理解できる。寄せられた声はしっかりと受け止めて、より良い商品ができるよう改善へつなげている。

時には書き込みに対して「マジボイス公式」の中の人からレスポンスがあることも。SNS全盛の時代とはいえ、これほどまでに顧客の声に耳を傾けるドンキは純粋にすごいと思うし、自分の声を直接届けられるからその商品への愛着も深くなるのだろう。

先日はドンキの人気商品「最後まで美味しい紅生姜せん」について、「majica」で味変更の希望を聞くアンケートが行われていたので、近いうちにパワーアップするかも。もちろん私もアンケートに回答した。

売れている商品もテコ入れしていく、ドンキの貪欲な姿勢はすごいなぁと感心するばかりだ。

カスタマーボイスが3件以上あったら改善に向けて着手するとか!

マジボイス実現委員会で検討会議

ドンキでは、書き込みの結果を受け、マジボイス実現委員会で検討会議にかけられる。マジボイス実現委員会は、商品開発、マーケティング、デザイン、品質改善、広報など各部門のメンバーで構成。月に一度、マジボイス上に書き込まれた口コミを基に選定した約5商品を関係各部門で改善に向けた議論をしているそう。

PPIHが公開している「マジボイス実現委員会」の会議潜入レポが非常に興味深い。「無添加ラップ」の記事などもあるが、野木さんたち開発チームの思いが炸裂し、実現委員会との攻防戦が繰り広げられている。

【会議潜入レポ】
「こんなに空気の悪い会議は初めて」「でも全部公開しちゃいました(笑)」ツナ缶を巡る大人たちの争い
https://majivoice.majica-net.com/article/?thread=4

改善に取り組んだものの叶わなかったものについては、引き続きメーカーなどと交渉を重ねたり、廃番にしたりということも。アプリ内では、それらの経緯や理由などが率直に述べられているところにも好感が持てる。

「マジボイス」内のツナ缶を巡る「改善レポート」

「majica」アプリ会員に向けたお得なサービスがたくさん。先の「無添加からだ想いラップ」は、アプリ会員だと22cm×50mは109円(一般価格175円)、30cm×100m は219円(一般価格285円)と超安い。さらに月替わりでこの「マジボイス」で特に高評価だった商品の中から厳選された10品がかなりお値打ちな会員限定価格で購入することができる。もちろん会員限定のクーポンなどもあるので、私は手放せなくなってしまった。

ドンキの内覧会で並んでいた、尖りすぎ、普通すぎ、辛すぎなど、様々な理由でボツになった商品の数々。開発するものの、世に出る前にボツになるものが圧倒的に多いのだそう

日本の小売業第4位

2024年に売り上げが2兆円を突破し、日本の小売業第4位となったPPIH。海外展開など、さまざまな要因はあるだろうが、独自の商品展開と顧客の心を掴む取り組みで着実に信頼を積み上げてきた。

こうした取り組みを改めて見ていくと、その真摯な姿勢に「やっぱり俺らのドンキだよね」と感じて、ますますドンキが好きになっちゃう。ドンキが繰り出す次の一手に今後も目が離せない。

「マジボイス」に“ドこたえし”て、“具材多め”が爆誕した

文・写真/市村幸妙

いちむら・ゆきえ。フリーランスのライター・編集者。地元・東京の農家さんとコミュニケーションを取ったり、手前味噌作りを友人たちと毎年共に行ったり、野菜類と発酵食品をこよなく愛する。中学受験業界にも強い雑食系。バンドの推し活も熱心にしている。落語家の夫と二人暮らし。

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