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三菱渾身のスペシャルティクーペ

三菱の新型クーペのFTOは、RX-7のようなピュアスポーツではなく、スペシャルティカー。当時の日本のスペシャルティカーと言えば、トヨタセリカ、日産シルビア、ホンダプレリュードが定番。一世を風靡した『デートカー』も死語状態となり、1980年代やバブル期のように爆発的に売れていたわけではないが、一定数の需要があってそれを御三家が分け合うかたちとなっていた。そんな強敵、ビッグネームが独占するマーケットにFTOは新規参入となった。

ビッグネームのセリカに挑む新参のFTO

当時の日本のクーペで出色のデザイン

ボディサイズは全長4320×全幅1735×全高1300mmでホイールベースは2500mm。当時話題にもならなかったし、どうでもいいことなのだがFTOのボディサイズは全高を除きフェラーリ328(全長4260×全幅1730×全高1130mm)と非常に近い。これについては、FTOうんぬんよりも、フェラーリ328のコンパクトさに驚かされる。

全高はFTOよりも低いが、全長、全幅はほぼ同じフェラーリ328

ショート&ワイドなプロポーションは日本車のライバルにはない斬新さがあった。そう、FTOの最大の魅力は、今見ても古さを感じさせないエクステリアデザインにあった。ショート&ワイドのプロポーション、フロントからリアにかけてシャープにせり上がる造形は動的な美しさを持っていた。ボリューム感のあるフロントフェンダー、スラント(傾斜のある)リアエンドなども当時の日本車にはないカッコよさがあった。運動性能を高めるために前後のオーバーハングは極端に短くされていたのは機能とデザインの融合だ。

フロントからリアにかけてせり上がるラインがカッコいい

デザインに最大限の賛辞

当時FTOのデザインが気に入って即買いした、という人も多く実際に筆者の大学時代の友人の2人がFTOのデザインに魅了されて新車で買った。1994年と言えば筆者は28歳。30歳前の独身男性がデザインに憧れて2ドアクーペを買う時代だったのが懐かしい。

FTOは「デザインだけでも買う価値あり」と言われていたが、これはスポーツ&スペシャルティに対する最大の賛辞だ。

当時日本車離れした秀逸なエクステリアだが、FTOよりもちょっと前にイタリア本国デビューしたクーペフィアット(日本での正規販売は1995年から)に似ていることから、「FTOはクーペフィアットの劣化版」と揶揄されることもあったが、クーペフィアットがそれほど売れたクルマではないため、オーナーで気にする人は皆無。

FTOと似ていると評判だったクーペフィアット

三菱のエンジン技術が凄い

FTOに搭載されたエンジンは1.8L、直列4気筒SOHC(125ps/16.5kgm)、2L、V6型6気筒DOHC(170ps/19.0kgm)、2L、V6型6気筒DOHC+MIVEC(200ps/20.4kgm)の3種類。2Lクラスのスペシャルティカーで唯一のV6エンジン搭載となった。

三菱は、1991年にV型6気筒エンジンとしては世界最小排気量の6A10型エンジンをランサー6に搭載しているように、小排気量V6は三菱の十八番。FTOの2L、V6エンジンの型式は、6A10型と同じ系列で排気量違いの6A12型。

2Lで200psを搭載するV6MIVECエンジン(6A12型)

注目はV6のMIVECエンジン。長くて申し訳ないがMIVECはミツビシ・インテリジェント&イノベイティブ・バルブタイミング&リフト・エレクトロニック・コントロールシステムの略。バルブの開閉タイミングの制御に加えて低速用カムと高速用カムを切り替えることで吸排気バルブのリフト量を変える技術で、ホンダが先鞭をつけたVTECと同じ技術。

VTECの登場はセンセーショナルだったが、VTECに対抗するエンジンをいち早く市販化したのはトヨタでもホンダでもなく三菱だった。ミニカダンガンの5バルブエンジン、前述の小排気量V6など、三菱のエンジン技術は昔から高かった。

MIVECにより高回転化が可能になり、2Lでリッター100psオーバーとなる200psを実現した。当時のMIVECはパワー/トルクを稼ぐ高性能追求のための技術だったが、現在では燃費性能、環境性能を追求するための技術として採用され続けている。

リアシートは狭いが、フロントの適度なテイト感がドライバーを刺激する
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市原 信幸
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