ポルシェを超えた!?
FTOのトランスミッションは2~4速をクロス化した5速MTと4速ATなのだが、4速ATは日本車初のマニュアルモード付きで、三菱ではINVECS-IIスポーツモード付き4ATと命名していた。Dレンジの左側に+と-があり、シフトレバーを前に倒すとシフトアップ、後ろに倒すとシフトダウンとなっていた。
AT操作に合わせて+と-が配置されているが、サーキット走行などでのGのかかり方と逆になるため違和感があるが、まぁすぐに慣れる。
MTのように任意のギアが選べるATはポルシェ911のティプトロニックが世界初。レスポンスがイマイチ、6000回転くらいまでしか引っ張れないと不評だったが、INVECS-IIスポーツモード付き4ATは、しっかり8000回転まで引っ張れたしレスポンスも上々。MTのようなダイレクト感はなかったがこれは仕方がない。デビュー時には4速ATだったが、1997年のマイナーチェンジで5速ATへと進化。
このINVECS-IIスポーツモード付き4ATの凄いところは、三菱お得意のファジー制御に加えて、学習機能が備えられていたこと。ドライバーの運転癖を学習してDレンジ固定の時にドライバーの運転特性に合わせて自動でシフトアップ&ダウンをしてくれる優れものだった。
このINVECS-IIスポーツモード付き4ATの技術力が、『1994~1995年日本カー・オブ・ザ・イヤー』受章の大きな要因となったのは間違いない。
足回りはFTO用に専用チューン
FTOはミラージュ/ランサーのセダン用シャシーに専用ボディが与えられている。ちなみに兄貴分のGTOはディアマンテとシャシーを共用。ただし、ミラージュ/ランサーのシャシーにカッコいいボディを載せただけではない。
サスペンション形式はフロントがストラット、リアがマルチリンクとベースのミラージュ/ランサーと同じだったが、フロントのストラット取り付け部にサブフレーム構造として剛性アップ。リアには新たなリンクの追加、ブッシュ類の見直しなどによりタイヤの接地変化を抑えるなど、ハードなスポーツ走行に堪えるだけの強化が施されていた。
FFのスペシャルティカーで最速
デザインコンシャスなFTOは、見た目だけのスポーティカーと思われがちだが、走らせても凄かった。リッター100psを超える2L、V6MIVECエンジンを搭載してライバルよりも軽い1170kgの車重ということもあり加速性能も優れていた。
ライバルが直4エンジンを搭載していたのは、フロントを重くしたくないという理由もある。FTOのボディサイズなら、最適解は直4というなか、三菱はプレミアム性を重視してFTOのスポーツモデルにV6を搭載。
FF(前輪駆動)で重いV6エンジンを搭載しているということでハンドリング、回頭性が懸念されていたが……。試乗してそれはまったく杞憂に終わった。実際に走らせてみると前述のとおり強化されたサスペンション、高いボディ剛性かつショートホイールベースによって、面白いように曲がる。タイヤがしっかりと接地していてトラクションの抜けも少なく、重いV6の存在を感じさせない。
車検証で確認すると、FTOの前後重量配分は前66:後34で、初代ホンダシビックタイプR(EK9型)の前67:後33よりもフロントヘビーではない。
FTOはナンパグルマに見られがちだが、1995年にホンダからインテグラタイプRが登場するまで、2LクラスのFFスペシャルティカーで最速モデルに君臨していた。
TVのCMがカッコよかった!!
FTOのキャッチフレーズは『この運動神経は、ふつうじゃない』というもので、キャッチコピーに偽りなし。そして20世紀はTVこそ万人向け最高のメディアと言われた時代で、TVで流れるCMは常に話題になっていた。
FTOのTV CMで印象的だったのはイメージソングとして使われていたフライングキッズの『セクシーフレンド・シックスティナイン』(アルバム『コミュニケーション』の収録曲・1994年)。いや~、これがカッコよかった。ラップ調で始まり、曲中はギターとドラムの掛け合いが心地よくてファルセットの使い方も絶妙。現代のコンプラ基準からすれば歌詞は少々エグいけど、当時は若い男たちの欲望をカッコよく歌い上げて魂に響いていた。
フライングキッズのイカ天時代(初代グランドキング)からのファンも、FTOのCMで存在を知った人も、この曲と言えばFTO、FTOと言えばこの曲という感じで相思相愛の関係だった。個人的に大ヒットした有名なデビュー曲の『幸せであるように』より好き。シングルカットしなかったのはもったいない。