今でこそ世界で確固たる地位を築いている日本車だが、暗黒のオイルショックで牙を抜かれた1970年代、それを克服し高性能化が顕著になりイケイケ状態だった1980年代、バブル崩壊により1989年を頂点に凋落の兆しを見せた1990年代など波乱万丈の変遷をたどった。高性能や豪華さで魅了したクルマ、デザインで賛否分かれたクルマ、時代を先取りして成功したクルマ、逆にそれが仇となったクルマなどなどいろいろ。本連載は昭和40年代に生まれたオジサンによる日本車回顧録。連載第53回目に取り上げるのは1983年にデビューした日産フェアレディZ、Zになってから3代目のZ31型だ。
フェアレディZは憧れの存在
筆者は1966年生まれで、小学生の時にスーパーカーブームを経験したスーパーカー世代のど真ん中。フェラーリ512、ランボルギーニミウラ、カウンタックに憧れていたが、その一方で日本車ではフェアレディZは別格の存在だった。広島の田舎に住んでいたこともあり、当時現役だったフェアレディZ(S30)を目にすることはまれで、たまに街中で見た時は友達同士で自慢し合っていたほど。今の小学生ならスマホでパシャリ、という感じだろうが、追い付けるわけはないのに見えなくなるまで追いかけていったものだ。
ロングノーズにショートデッキの古典的なスポーツカールック、彫り込んだヘッドライトなど、見た目はスーパーカーだったし、近所にも持っている人はいなかった。
Z31はフェアレディZの3代目
今回紹介するZ31型のフェアレディはフェアレディZになってから3代目。初代のS30型、その初代のイメージを色濃く残すS130の次に出たモデル。デビューは1983年、筆者が高校1年生の時で、クルマへの興味が高まっていた頃だ。
その頃の日本車のトピックと言えば、1980年に日産が初代レパードを登場させ、高級パーソナルクーペの先鞭をつけた。そして、トヨタが初代ソアラ、2代目セリカXXを登場させたのが決定打となり人気爆発した。残念ながらレパードは個性的ではあったが、販売面ではトヨタの2台に大きく水を開けられた。
1980年代前半はクーペが大人気
日産に目を移すと、1981年に『日本人の心のクルマ』だったスカイラインがフルモデルチェンジしてR30型が登場。ニューマンスカイライン、鉄仮面(後期型)と呼ばれたモデルだ。スカイラインは4ドアセダンと2ドアクーペをラインナップしていたため、キャラ的には違うのだが、ソアラ、セリカXXによりも硬派というイメージだった。
クーペが人気ということで、クルマ雑誌などでは早くからZ31のスクープ情報が掲載され、それを見て若者が一喜一憂していた。当時筆者の愛読書は、現在在籍している『ベストカー』ではなく『ホリデーオート』(モーターマガジン社・2019年休刊)で、正式デビューの1年前くらいにはZ31の特徴的なヘッドライトをスクープしていたと記憶している。