お気に入りの紀土純米酒をぬる燗で味わう
その晩、バーに立ち寄った柴田さんは、お気に入りの紀土純米酒をぬる燗で味わった。穏やかな吟醸香、確かな旨みと余韻、鋭いキレがバランスよくまとまった食中酒にぴったりの酒だ。
「海外旅行から帰宅するとほっと寛ぎますよね。他のいろんな酒を楽しんだ後にも、必ず戻ってきて安心できる酒にしたいと思って造っています」
和歌山は、野菜を漬け込んで作る金山寺味噌の名産地。その工程で生まれる汁を調味料に発展させた醤油の発祥地でもある。柴田さんは日本最古と言われる三ツ星醤油で食べる汲み上げ豆腐を肴に杯を重ねる。
「山椒を効かせた金山寺味噌とクリームチーズ和えもぬる燗と相性抜群です。永遠に飲める危険な組み合わせです(笑)」
自宅では奥様が、自分は下戸であるにもかかわらず、料理に合わせた酒を用意してくれている。水茄子漬けに冷酒、ステーキに赤ワイン……月2、3度登場する大好物の揚げ春巻きには紀土の常温を合わせる。
「パリパリの皮、肉そぼろやタケノコが入った熱々の餡が、純米酒と意外と合うんですよ」
興が乗り、平和酒店向かいの「太平洋酒場」へハシゴ酒。蔵人みんなの定番コースだ。紀州名物のしらすの釜揚げとマグロの山かけでさらに数杯。奥様への連絡は少し遅くなってしまった。