祭のようなにぎわいも楽しい谷中ぎんざ飲み
近くに墓があるため谷中ぎんざは小さな頃からよく通った商店街。その頃は思いもよらなかったよ、午前中から飲み歩くダメな大人になるなんてさ。まあいい。今日は祝日、天気も快晴。飲むしかない。
「ここです、土・日・祝しか営業してない店」と戎くん。
『やきや』は関西ではお馴染みといういか焼きの店で、大阪出身の彼は鼻息が荒い。ソース&マヨたっぷりのそれはビールを呼ぶ味でジョッキがあっという間に空になる。昨晩、図らずも深酒してしまった私。この迎え酒によりスイッチが入った。
そして2軒目が『越後屋酒店』。次のお目当ては日本酒だ。おっと、酒をおいしく飲むにはつまみもないとね。数軒先の鮮魚店『福島商店』を覗いてみたら舟に盛られた刺身がズラリ。ショーケースから数品見繕って店に舞い戻る。味の染みた牡蠣のしぐれ煮で一杯。コリっと歯応えのよいサザエで一杯。ポカポカ陽気のもと外での立ち飲みっていう解放感も手伝ってスルスル進む。
「すでに赤くなってません?」と戎くんが顔を覗いてきた。
へーき、へーき、これ日焼け。さて次はどこへ行く?と言ったものの『そば畔上』の看板を見たらがぜん腹が減ってきた。熱燗をぐいぐいやりながら蕎麦の到着を待つ。選んだのは辛口カレー蕎麦だ。蕎麦屋の辛口なんてへっちゃらと舐めてかかったら本気の辛口。でもこれに燗の冷めた群馬泉の甘みがよく合うんだな。
『そば畔上』辛口カレーそば1100円、そば焼酎ソーダ割り500円
外に出ると太陽が眩しい。うう、目に刺さる。
「ここらでリセットしましょ」と戎くんの提案で飛び込んだのが『写楽』。
看板の生レモンサワーは爽やかな酸味が効いていて、一気に目が覚める感じ。3杯、4杯とおかわりして、正気に戻ろうとしたけど、そこは酒。立ち上がったらおっとっと。でもこのくらいが一番楽しい酔い具合。
じゃあもう1軒行っちゃおうと店を探せば、あるじゃないのワインの店『ICHIGOYA』。グラスオール600円の明朗会計に気を良くして結局ふたりで1本分くらい飲み、瞼が半開きになったところでお開きに。
休日の谷中ぎんざはお祭りみたいな活気があってそれが酒飲みの心にブースト。ぜひここで“おとなの週末”をお過ごしください。
撮影/小島昇、小澤晶子(風景)、取材/菜々山いく子
■おとなの週末2025年5月号は「谷根千さんぽ」
※2025年5月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
…つづく「谷根千特集」でも実食レポートしています。