旬の食材は食べて美味しいだけではなく、栄養もたっぷり。本コーナーでは魚や野菜、果物など旬食材の魅力をご紹介します。
さて、今回のテーマとなる食材は?
文/おと週Web編集部、画像/写真AC
■丸くてツヤツヤ
正解:賀茂なす
難易度:★★★★☆
実は緻密で、ぎっしり詰まっています
賀茂なすは、京都府を中心に栽培されている丸なすの一種で、「京の伝統野菜」にも指定されている品種です。京都市の北部、上賀茂や下鴨といった鴨川流域の地域で古くから育てられてきたことから、「賀茂なす」という名がつけられました。
現在「賀茂なす」という名称を使えるのは、京都府内で生産されたものに限られています。これは、京のブランド産品としての品質や伝統を守るための取り組みで、京都府が定めた基準を満たす生産者のみに使用が許されています。
まん丸な形と、ツヤがある深い紫色をした果皮を持ち、果実は直径10cm以上、重量も500g前後と、大ぶりです。
果肉は緻密で水分が少なく、加熱しても煮崩れしにくいのが特長です。火を通すことで中はとろけるようにやわらかくなり、コクのある味わいが引き出されます。
出荷の最盛期は7月から9月にかけて。この時期の賀茂なすは、皮の色ツヤがよく、果肉にも弾力があり、味のバランスがもっともよいとされています。
果実が大きくて重いため、枝が折れないように丁寧に支柱を立て、風通しや日当たりにも気を配りながら育てなくてはなりません。また、高品質なものを育てるためには、ひと株から収穫する実の数を制限する必要があり、収穫量は決して多くはありません。
こういったことから、一般的な長なすよりも高値で取引きされる傾向があります。
賀茂なすは京都の高級料亭でも重宝されています。とくに、夏の京料理に欠かせない魚「鱧(ハモ)」との相性は抜群。鱧と賀茂なすを一緒に炊いた椀物や揚げ物は、京料理らしい繊細な味わいが感じられる逸品として知られています。
ほかに賀茂なすを使った代表的な料理といえば、「賀茂なすの田楽」です。舟形や、厚めの輪切りにして焼いた賀茂なすに、甘めの味噌だれをたっぷり塗って仕上げるこの料理は、京都の夏の味として定番です。
そのほかにも、煮物や揚げ出し、天ぷらなどさまざまな料理に使えます。イタリアンや中華にも応用でき、オリーブオイルやチーズ、トマトとの相性も抜群です。
賀茂なすのヘタには鋭いトゲがあり、うっかり素手で触るとケガをしてしまうことがあります。家庭で調理する際も、ヘタを切り取るときには気をつけましょう。