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約3か月かけて行う、昔ながらの“静置発酵”

アルコール発酵が終わるといよいよ酢の発酵に。「種酢」と呼ばれる自家醸造した酢と、酢もともろみ、濃度を調整するための水を甕(かめ)に入れて室温約30度の発酵室で静置する。「発酵が一番よく進む温度は土地によっても違います。いろいろ試した結果、甕の内部が35度になるようにしています」と戸塚さん。

数日すると、菌膜と呼ばれる膜が現れる。はじめは和紙のように薄く、徐々にちりめん状に張る。神秘的なその膜は、酢酸菌が空気から酸素を取り込み、アルコールを酸に変えている。酸はアルコールよりも重いために沈み、対流することで全体が発酵する。これを昔ながらの「静置発酵」といい、約3か月かけて見守り、育てる。

ちなみに量販されているお酢のほとんどは、液体を攪拌しながら人工的に空気を送り込む「全面発酵」という手法で行われる。完了までわずか数時間と効率よく酸を生み出すことはできるが、香りが醸成されるのは難しいのだという。

戸塚さんは甕の封の部分に指を当てれば適温かどうかを判断できるという。何度も確かめるうちにわかるようになったとか

発酵室に入らせてもらうと、濃厚な甘い香りとスギの香りに体を包まれた。戸塚さんはこの香りも発酵の手掛かりとしながら、様子を見守る。嫌な香りは発酵がうまくいっていない証拠なのでその膜を取り除き、発酵が進んでいる甕の膜を移すなど、細かな作業が欠かせない。発酵後はさらに味わいに深みを出すためそっと上澄みを熟成用の甕に移す。

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クリアだけど菌体が残る上澄みの熟成酢
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『おとなの週末』編集部
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