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クリアだけど菌体が残る上澄みの熟成酢

酢を熟成させるための蔵にはずらりと甕が並んでいた。これは江戸時代末期から薩摩藩で使われていた甕で、国内ではもう手に入らない。甕は陶器でできており、通気性があるので酢酸菌が呼吸しながら、ゆるやかに熟成が進む。

国産のスギやアカマツなどで組まれた熟成室は当時80代だった宮大工職人がひとりで建てたという。圧巻

「ステンレスやプラスチックのタンクとはひと味違う深みが生まれます」と語る戸塚さん。蔵に移されたお酢は始め濁っているが、ある段階から急にその澱が沈み、澄んだ状態になる。そうして生まれる「心の酢」は、濁りはないが酢酸菌の菌体も壊れずに残っているのだそう。

「清澄のためにお酢にろ過材を入れることはしたくないし、ろ過によって失われてしまう風味があると思います。発酵が完全に終わるよう丁寧に進めれば雑味も生まれないですし、液体もクリアにできるんです」と戸塚さんは断言する。

ひとつの甕には400リットルの酢が入る

実際、とある研究によれば、「心の酢」には一般的なろ過済みの酢の何倍もの酢酸菌と、さまざまな種類の有機酸も含まれていたという。こうして一年以上かけて生まれる酢からは、芳醇な米の香りも立ちのぼる。

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〈米酢造りの基本工程(戸塚醸造店「心の酢」の場合)〉
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『おとなの週末』編集部
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