手打蕎麦 松永@明治神宮前
飾らない姿に上品な風情が漂う香り高き一杯
理想の天ぷら蕎麦を絵に描けと言われたら、きっとこの店のそれを写生する。スッと気品あるエビが2尾、仲良く寄り添う夫婦のようだ。サクリと揚げたての旨さは言わば新婚時代か。衣にツユが染みればそれまた熟年期の如き深い味わいとなる。
なめらかな舌触りの蕎麦は店主が好みの二八で、一番ダシを使うかけ汁はどこまでも香り高い。実は節類も醤油も至って普通の素材で仕込むのだとか。皆が使う材料でいかに美味しく作るか、それが信条。しかも独学。努力は容易に想像できるが、ひけらかさないのもかっこいい。味にも姿勢にも、惚れる店です。
住所:東京都渋谷区神宮前2-19-12
TEL:03-3402-7738
営業時間:11時半~蕎麦が無くなり次第終了
定休日:日・祝
交通:地下鉄千代田線明治神宮前駅・副都心線北参道駅2番出口などから徒歩10分
蕎肆(きょうし)浅野屋(あさのや)@糀谷
繊細な衣からお宝がザクザク 口福なかき揚げ蕎麦
ひとつの作品を愛でて楽しむような感覚。淡い白衣は見るからに繊細だ。箸を入れると儚げに崩れ、ザクザク現れるエビと小柱の宝に笑みがこぼれる。まずはそのまま抹茶塩で。これが酒の肴に最高で……先に完食しないようご用心(そりゃ私か)。
次にサバ節香るツユに浸して。衣の旨みが一面に広がり、得も言われぬ奥深さとなる。しなやかなコシの蕎麦は2代目が家業を継いだ20年前に手打ちに変えたという。落語に登場するようなツルツルとしたのど越しをイメージして打つ。冬の定番なら国産鴨や牡蠣の蕎麦も。味わいたい“作品”はまだまだある。
住所:東京都大田区南蒲田2-18-4
TEL:03-3738-3426
営業時間:11時半~15時(14時半LO)、17時半~22時(21時半LO) ※政府の要請で変動あり
定休日:日
交通:京浜急行線糀谷駅から徒歩5分