週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。
本欄では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第5回目は、「赤飯」です。
「赤」に秘められた願い “栄養の宝庫”小豆パワーで病気予防
さまざまな年中行事の伝統料理として、また、入学や就職、成人や還暦祝いなど人生の門出のお祝い膳に欠かせない赤飯。一般的にもち米に、小豆やささげ(豆)を混ぜて蒸して作られ、ほんのり色づいたモチモチした食感と小豆のほのかな風味が特別感を出しています。
どうして、ハレの日に赤飯を食べるようになったのか――。食品会社や団体でつくる「赤飯文化啓発協会」のホームページには、「赤い色」に秘密があるとされています。それによると、昔、赤には呪力があり、災いを避ける力があると信じられ、魔除けの意味を込めて、祝いの席でふるまわれるようになったと記されています。
一般庶民の食卓にあがるようになったのは、江戸時代後期から。この頃流行っていた病(やまい)の脚気(かっけ)は、ビタミンB1不足によるものだったことから、小豆の煮汁でご飯を赤く染める赤飯は、丸ごと栄養が取れるため、積極的に食べることで、予防や健康に良いとされて広まりました。
ビタミンB1 やポリフェノールをはじめ、豊富な栄養素を含む小豆の効能は、前回(第4回)「ぼたもち(おはぎ)」でもふれた通り。改めて、小豆パワー恐るべし、ですね。
甘納豆、しょう油、まんじゅう…後世に伝えたいお国自慢の味
調べてみると、全国各地には郷土“食”豊かな赤飯があることに気づきます。
小豆の生産量日本一を誇る北海道では、何と赤飯に甘納豆を混ぜ込んだ「甘い赤飯」が一般的です。「働くお母さんが手軽に作ることができるように」と考案され、なぜか遠く離れた山梨県でも、「甘納豆入り」が作られています。「甘い赤飯」とは一見、驚きですが、ごま塩をかけた甘じょっぱさがたまりません。
関東地方では、小豆の代わりにささげを使います。なんでも、小豆を煮ると皮が破れるさまが切腹を連想し縁起が悪いとされて、江戸時代、武家では煮ても皮が破れず形を保ったままのささげを使ったことから、現代に至ります。
「赤くない赤飯」として知られるのが、新潟県長岡市の「しょう油赤飯」です。しょう油などで味付けされたもち米と小豆の代わりに金時豆が使われ、見た目は茶色。こちらでは、ハレの日に限らず日常的に「しょう油赤飯」が作られることが多く、一層なじみ深いもののようです。
ほかにも、さといものころ煮が入った「さといも赤飯」(福井県大野市)や、赤飯を紅白のまんじゅうの生地で包んだ「赤飯まんじゅう」(長野県伊那地方ほか)など、今日まで大切に受け継がれています。赤飯ひとつとっても、日本の豊かな食文化が垣間見え、ぜひ後世に伝えてほしいですね。