『おとなの週末Web』では、手作りの味も追求していきます。そんな「おとなの週末」を楽しんでいる手作り好きから、折々の酒肴を「季節の目印」ともいえる二十四節気にあわせて紹介しています。 「立夏」を迎えた10回目は、初夏の味・さざえをふんだんに使ったつぼ焼きご飯です。
野外で焼いたさざえのつぼ焼きを、炊いたご飯で蒸らすだけ
古くからの生活暦・二十四節気では、5月5日からの2週間ほどが「立夏」(5月20日まで)となります。文字どおり、「夏が立つ」季節です。折しも、ゴールデンウイーク。さわやかな風と太陽の下、河原でのバーベキューを楽しみたい頃。しかし……、新型コロナもあって、野外めしの機会はめっきり減ってしまいました。もったいない限りです。
そんなとき、ジジイは貪欲です。河原のバーベキューが厳しければ、玄関先でやるのが66歳のオイラなのです。まぁ、正確に申し上げると、鍋用のカセットコンロを玄関先に持ち出して、網の上で干物などを焼いているだけなのですが……。
初夏の頃の焼き物といえば、さざえのつぼ焼きです。漁港の近くの魚屋さんなどには、店先に七輪と網が置いてあるろころもありますよね。店で買ったさざえなどをその場で「浜焼き」にするのですが、磯の香りとしょうゆの焦げた匂いがたまりません。しかもアツアツ、歯ごたえも豪快なさざえの味わいは、まさに焼き物のホームラン王(死語?)です。
もちろん、ビールが進むことは間違いありません。最高の酒肴のひとつです。ただし、家でさざえをつぼ焼きにしても、海辺で食べる「浜焼き」の味にはとても及びません。火の上で焼き上がったものを直接ほおばるのとはやはり違うのです。それでも、貪欲ジジイの欲望はとどまりません。
「あの浜焼きの味を、ご飯と一緒に食べたい……」
そうなんです。独特の香ばしい磯の味わいを「ご飯とともに」という野望が芽生えたのです。かくして、「プロジェクトS(さざえの略)」が始まったのは数年前です。スタートは海辺のお土産物屋さんで見つけた「さざえご飯の素」。その後は、さざえを刻んで味をつけてからご飯を炊いたりもしましたが、う~ん、これも単なる炊き込みご飯でしたね。決定的に香りが弱いのです。
そこで行き着いたのが原点回帰。はい、野外で焼いたさざえのつぼ焼きを刻み、炊き上がったご飯の上で数分蒸らすだけのやり方です。コイツが抜群にうまい! ご飯の中に、つぼ焼きが閉じ込められているような、まさに香りの宝石箱や~(ここは彦摩呂ふう)。