斬新な調理スタイルの「バズレシピ」や「至高のレシピ」で話題のリュウジさんは、お酒を飲みながら料理をするというYouTube動画が人気の料理研究家です。レシピの公開だけでなく、Twitter「リュウジの酒場探求記」では気になる飲食店の紹介も。SNSなどの総フォロワー数が約800万人という「料理のお兄さん」が、感性の赴くままに歩いて街で見つけた「自分史上最高にウマくて、楽しく飲める店」について本音で語ります。
第11回は東京・上野の「静岡おでん 伊豆の味 そうだら」です。
イチオシは厚揚げ、牛タンのロールキャベツ風はもはやフレンチ!!
まだ底冷えする夜、体の芯から温まりたいなと思いながら歩いていると、偶然、「静岡おでん」の看板が目に飛び込んできました。店は、上野アメ横商店街にほど近い路地裏の雑居ビル2階にあります。静岡おでんは都内ではあまり見かけませんが、期待して店内へ。
カウンター前に置かれた大鍋の中は、真っ黒なつゆに浸されたおでんダネが、竹串に刺さり、グツグツ煮えながら甘じょっぱい湯気を漂わせています。
静岡おでんの特徴は、この「真っ黒なつゆ」。静岡おでんは一般的には、鰹と昆布だしに牛スジを加え、そこに濃口醤油を入れることで黒くなっていくと言われています。ここのお店は、たまり醤油を使っているのだとか。
中でも目を見張ったのは、厚さ4、5センチもある大根。3日間煮込んだ真っ黒な大根は、中まで味がしみ込んでおり、口の中でほろっととろける美味しさ。見た目とは違って意外にしょっぱさは感じられず、体の隅々までしみ渡るような滋味深い味わい。塩分濃度に相当気をつかって、つゆを作っているようで、安心していただけます。
食べる時に、おでんダネにサバなどの削り節の粉や青のりをかけるのも静岡風。大根のほか静岡おでんに欠かせない黒はんぺんと牛スジなど5串を揃えた「静岡おでん盛り合わせ」(980円)のほか、15種ほどあるおでんダネは1串200円から注文可能。ハモ天など珍しい串もあり、高級品のハモの旨味がぎゅっとつまっていて、食べ応え十分。
イチオシは、厚揚げ。素朴な厚揚げが特異なつゆをたっぷり吸いこんで、噛みしめる度にだしの旨味がじゅわっとあふれ出します。これぞ、静岡おでんの集大成!
変わりダネとしては、牛タンをキャベツで巻いたロールキャベツ風の一品(1200円)を推します。牛タンと共にクタクタに煮込まれたキャベツのほのかな甘味が効いた乙な味で、まるでフレンチをいただいているよう。繊細で、丁寧な仕事ぶりに感激しました。