並んで食べる――それは“食欲”と“労苦”との葛藤、鬩ぎ合いである。“食欲”が“労苦”に打ち勝ち“忍耐”として成就した時にのみ、人は美食にありつける。
てなことを難しく書いて見ましたが、ようするに思うわけです。みなさんもきっと思ってると思うんです。
行列のできる飲食店。その行列をして待つという忍耐行為には、それに見合うだけの価値があるのだろうか?
たしかに行列ができているということは、それだけ多くの人が行列する価値を見いだして行列をしているんだろうけど、なんだかんだ言っても行列してる人はせいぜい多くて100人くらいじゃないですか?
東京だけでも一千万以上の人間が暮らしてるんですから、それに比べると100人なんてものすごい少数じゃないですか?
ようするに極一部の物好きが並んでるだけ……なんていう考え方もできるんですよ、ネガティブに言えば。でもそんな風に頭で考えてるだけじゃなんの答えも出てこない。ここは一度しっかり並んでみて、本当に並んだ価値があったかを、確かめなければならない。
そこで都内の有名行列店に実際に並んで食べて、行列の壮絶さと、その価値を計ってまいりました。
仙川 『AOSAN』
【待ち時間】35分/34人
まず最初は仙川の行列のできるパン屋さん『AOSAN』である。飲食店に比べお客の回転も早いはずだから、並ぶ時間も短いはずなので、最初の行列店としてはうってつけだろう。
昼の12時開店のところ、それより15分早い11時45分に店前に到着すると、早くも長い行列ができている。数えるとオレが24番目。
一体なにを求めてここまで行列?と思うも、その答えは徐々に判明していく。
開店時間までの15分はアッという間に過ぎ、客の入店開始。この時点で筆者の後には10名が追加され、34人の行列ができていた。あとはすぐ入れるかと思いきや、こっから待つことさらに20分。合計35分並んで12時20分に入店したんだが、その直前、店員さんが出てきて行列している全員に大きな声を張り上げた。
「角食はあと20斤ほどになりま~す! !」
そうなのだ、ここに並んでる多くの人が、数量限定の“角食”と呼ばれる食パンを求めていたのだ! これを買うためには並ばなきゃいけなかったのだ!
ここにこの店の並ぶ理由があったのだ。考えて見れば、筆者の入店時点であと20斤。筆者が並んでいた平日はひとり3斤まで買えるのけど、もう2斤買っちゃったし、筆者の後に並んでた人は、せいぜい10人くらいしか購入できないんじゃないか? ってことは少なくても開店時間の12時には並ばないと買えないってことだ。
そして買った角食。家に帰って袋から取り出した瞬間、普段はパンなどなんの興味を示さないウチのネコが走ってきて食らいついたのだ。ネコすら飛びつくをパンを口に入れると、まずシットリした重量感。そしてモチッとした弾力と香る小麦。そりゃパン好きには堪らないだろう。
結論。パン好きなら開店の12時前に『AOSAN』に並ぶ価値あり。