運動をしている子どもたちの冬の風物詩といえば、早朝の寒稽古であった。学習院初等科高学年のころ、浩宮さまは剣道をされていた。朝早くに登校される浩宮さまのために、美智子さまは温かな料理を用意して送り出された。朝のひととき、美智子さまにとってお子さまのために何かをすることは喜びであった。今回は、お子さまたちへ向けた美智子さまのやさしいまなざしの物語である。
早朝のひととき、お子さまたちのために料理を
かつて浩宮さま(天皇陛下)、礼宮さま(秋篠宮さま)、紀宮さま(黒田清子さん)は学習院初等科で学ばれた。お子さまたちは、授業をはじめ、遠足や修学旅行といった学校行事を体験された。学校生活のお話を、陛下(上皇陛下)と美智子さまは楽しそうにお聞きになっていたという。しかし、ご公務や宮中の祭祀をすべてに優先されているお二人にとって、お子さまがたの学校生活をご覧になる機会はそうたくさんはなかった。
昼間、お子さまたちとご一緒することがかなわない毎日の中で、ご自分のキッチンを持たれた美智子さまにとって、早朝のひととき、お子さまたちのために料理を作られるのが喜びであり、また楽しみでもあった。
浩宮さまも礼宮さまも、初等科高学年で剣道の稽古をされていた。そのころ剣道部といえば、始業前の稽古がさかんであった。寒さ厳しい冬でも早朝の寒稽古は行われた。朝早くに御所を出て登校されるお子さまたちのために、美智子さまはまだ暗いうちからお起きになって手ずから料理を作られた。
お子さまがたが登校する前に召し上がれるような、簡単だけれど体が温まる雑炊や、稽古を終えてから召し上がるための朝食用のお弁当を整えられるのである。出発前には、お子さまたちのお供をする職員にも同様のものを届けて、体を温めるよう気遣われた。
そうして、陛下と美智子さまは、お弁当を持って登校されるお子さまたちの後ろ姿をお見送りされるのである。お見送りは、お二人にとってお子さま方が学童時代にできるだけ欠かさないようにされた日々の慣わしであった。