酒の造り手だって、そりゃ酒を飲む。誰よりもその酒のことを知り、我が子のように愛する醸造のプロ「杜氏」は、一体どのように呑んでいるのか。今回は和歌山県海南市の平和酒造を訪ねた。杜氏の柴田英道さんは、日本酒のみならずどぶろくも手がけ、さらに醸造のみならず、店舗経営まで。気鋭の杜氏の素顔に迫ります。
2006年、和歌山県『平和酒造』の杜氏に就任
【柴田英道氏】
1974年、ブラジル・ベレン市生まれ。8歳までブラジル、その後は大阪で過ごす。大学までサッカーに打ち込み、実業団チームにも所属。1999年、平和酒造に入社。但馬杜氏に師事し酒造りに取り組む。2006年、杜氏に就任。
料理に合わせて純米の常温かぬる燗を
「はじめの1杯はハイボール。その後は料理に合わせて純米酒の常温かぬる燗を酌む」と杜氏は言った。
「紀土(きっど)」を醸す平和酒造の杜氏・柴田英道さんだ。紀土という名は「紀州の風土」に由来する。清冽な高野山伏流水を仕込み水に使った、やわらかく軽やかな口当たりとやさしい旨みが特長の日本酒だ。同酒造では、和歌山名産の果物を使ったリキュール「鶴梅」やクラフトビール「平和クラフト」も醸造する。
蔵から車で40分ほどの南海和歌山市駅直結の商業施設内には、すべての商品を扱う「平和酒店」を運営し、約8名の蔵人は酒造りと酒店スタッフを兼務する。店先の立ち飲みバーは、酒造りを終えた蔵人の仕事帰りの止まり木でもある。
平和酒店のバーには蔵人が持ち回りでスタッフとして立ち、客としても訪れる。お客様の意見に耳を傾け、お客様目線で酒を味わう貴重な機会だ。