今でこそ世界で確固たる地位を築いている日本車だが、暗黒のオイルショックで牙を抜かれた1970年代、それを克服し高性能化が顕著になりイケイケ状態だった1980年代、バブル崩壊により1989年を頂点に凋落の兆しを見せた1990年代など波乱万丈の変遷をたどった。高性能や豪華さで魅了したクルマ、デザインで賛否分かれたクルマ、時代を先取りして成功したクルマ、逆にそれが仇となったクルマなどなどいろいろ。本連載は昭和40年代に生まれたオジサンによる日本車回顧録。連載第69回目に取り上げるのは1996年にデビューした初代日産ステージアだ。
初代レガシィの登場でワゴンブーム勃発
1989年にスバルが初代レガシィツーリングワゴンを登場させた。初代について言えば2Lターボを追加してから、ハイパワー4WDワゴンというそれまでの日本車にないジャンルを確立し、2代目で大ヒットし、日本にステーションワゴンブームを巻き起こした。
同時にレガシィの登場により日本のクルマ界も大きく変わることになる。レガシィ登場以前にもステーションワゴンは存在したが、商用バンを併設しているケースが多く、ワゴン=商用バンというイメージが強かった。しかし、レガシィは商用版をラインナップせず常用のみとしたのは大ヒットの大きな要因だ。
日産のワゴン事情
日産はフルラインナップメーカーだけあり、セドリック/グロリア、スカイライン、ブルーバード、サニーといった主力モデルは歴代ワゴンとバンをラインナップしていた。日産初のワゴン/バン専用モデルは、1990年デビューの初代アベニール。この初代アベニールはブルーバードワゴン/バンの後継モデル的ポジションで、欧州ではプリメーラワゴンとして販売された。プリメーラワゴンがセダンと同一シャシーで登場するのは2代目から。
一方日産の2Lクラスのワゴンといえばスカイラインが担っていた。初代レガシィと同じ年にデビューしたR32型にもワゴンは設定されていたが、R31型のワゴンのキャリーオーバーで、レガシィの対抗馬には成り得なかった。いわばワゴンを設定しているだけという状態だったのだ。バンに至っては、R30型のバンをキャリーオーバーというありさま。売る気あるのか? とう感じだが、当時はトヨタのマークII系しかり、この手法が当たり前だった。ワゴン/バンのポジションはそんなもんだったのだ。
レガシィよりも上級のステーションワゴン
しかし、レガシィのヒットは日本の自動車メーカーを大きく変えた。レガシィが登場してからワゴンではなく、ステーションワゴンという名称が定着し、ワゴン=オシャレという感じにまでなった。
ステーションワゴンブームに対し日産が出した答えはレガシィよりも上級のステーションワゴンの開発だった。それによって誕生したのが初代ステージアなのだ。
初代ステージアはR33型スカイライン、C34型ローレルとエンジン、シャシーといった基本的なコンポーネントを共用する高級ステーションワゴンだ。初代ステージアが登場したことでスカイラインワゴンは消滅したので、スカイラインワゴンの後継モデルでもある。ちなみにローレルは歴代モデルともワゴンが設定されたことがない。
ステージア(STEGEA)の車名は、STAGE(舞台)にADVANCE(先進性)の頭文字を組み合わせたもの。先進的な新たな舞台への挑戦という意味だ。