まず肴で一杯、〆めに蕎麦を食し店をあとにする。江戸っ子の愛した粋な飲み方は、令和にも健在です。今回は、メインはいったいどっち!?そんなラビリンスに迷い込む肴も蕎麦も極めた粋な蕎麦屋をご紹介。
旨みが溶け出したのど越し抜群の手打ち蕎麦で〆『手打ちそば一刻庵』@新小岩
江戸時代から続き、いまもなお、大人の心を掴んで離さない“蕎麦前”。敷居が高いようで、踏み込んでしまえばなんとも懐の深い文化である。
守るべきは、「軽く飲んで、締めの蕎麦を食べたら、長居せずにさっと店を出る」くらい。
あとは自分好みの蕎麦前作法を模索するのが粋なのである。さらに、昼飲みが歓迎されるのも大きな魅力。むしろ昼下がりにひとり蕎麦屋飲み、なんてよっぽど粋にすら感じられる。
「昼から飲みに来られる方も多いですよ。常連さんだと週2~3回はいらっしゃいます」。
新小岩に店を構える『一刻庵』もまた、そんな粋な蕎麦前を堪能できる名店。供される多くの肴は、蕎麦の実やツユを用いており、まるで〆へのレールが敷かれているような安心感。さっそく各駅電車に乗り、ゆったりと美酒を味わう旅に出てみる。
鴨のつくね串(1本)250円、ゆばさし900円
まずはとろけるようなゆばさしを本枯れ節と、亀節を使用した香り高い蕎麦ツユ、摺りたてのワサビでペロリ。さらに、山形県産蔵王鴨肉の串の甘いタレで、辛口の「日高見」をクイッ。スッキリとした味わいと、鴨肉の旨みを堪能し、移り変わる口内の景色を楽しむ。
〆は「イベリコ豚の肉そば」。豚の甘い脂とツユがジワリと温めてくれる。のど越しを重視し、硬めに茹で上げた二八蕎麦を啜れば、蕎麦とさわやかな柚子の香りが心地よい。
約1時間の小旅行を終え店をあとにする。駅までの15分の帰路をほろ酔いで歩けば、「もう一杯いっちゃおうか」なんて。気ままに楽しめる蕎麦前の粋に、また甘えてしまいたくなる。
店主:鈴木勝博さん「香り高い蕎麦は伸びてしまう前に楽しんでください!」
[店名]『手打ちそば一刻庵』
[住所]東京都葛飾区東新小岩7-25-16
[電話]03-5654-6159
[営業時間]11時半~14時(13時45分LO)、17時半~20時半(19時50分LO)
[休日]水(不定休)、木
[交通]JR総武線新小岩駅北口から徒歩15分、京成バス東須磨橋バス停下車徒歩1分





































