神明神社、八王子社…古材は80年にわたって受け継がれる
篠島は周囲が約8km。知多半島の先端から約4km沖に位置しています。有名なのは、伊勢神宮との深いかかわりです。島内にある神明(しんめい)神社(771年に伊勢神宮の古材を使って建立)と、八王子社(1288年建立)に、その接点を色濃く見ることができます。
篠島観光協会の荒木信昌会長ら地元の人に案内されて、神明神社へ。美しい砂浜が約800m続く前浜(ないば)から内陸に向かって徒歩で1~2分程度。家屋の並びに、神明神社はありました。
1200年以上も島民を護ってきた由緒ある神社と、伊勢神宮との接点は何なのか。その答えは、20年ごとに行われる「式年遷宮」にあります。「二十年に一度、社殿と神宝を新調して大御神にお遷り願う神宮最大の神事」(伊勢神宮のホームページより)。この式年遷宮では、20年に1度、社殿が建て替えられます。その際に出た古材が篠島に運ばれ、神明神社の造営に使われるのです。
つまり、神明神社も20年に一度建て替えられることになります。次にその古材は、八王子社で使われます。八王子社の古材は、さらに島内に点在する小さな社に用います。
「こうして80年にわたって、形を変えて、使われ続けるのです」。荒木会長のお話をうかがいながら、改めて神明神社の社殿に向き合います。かつて訪れたことのある伊勢神宮の光景を重ねました。歴史の重みが胸に迫ってきました。
八王子社は、神明神社から浜に面した通りを歩いて5分ほど。同じように少し内陸側に入った樹々の中にあります。毎年1月3日宵の口には、御神体が運ばれる神事があります。「お渡り」です。午後6時から、八王子社から神明神社に移動する際の約30分間、島内の明かりが消されます。島民たちは、じっと家の中にこもって、「お渡り」が終わるのを待つのです。
篠島の日没は午後5時前です。暗闇の中、厳かな時間を実感することになります。