1000年以上続くと伝えられる「おんべ鯛」の奉納
伊勢神宮との関係は、他に見いだせます。伊勢神宮へ「おんべ鯛」という塩漬けした干鯛の奉納が、毎年、6月、10月、12月の3回に分けて行われます。奉納される干鯛は年3回で計508匹にもなります。おんべ鯛の奉納は、1000年以上も続いているといわれています。特に「おんべ鯛奉納祭」の10月12日には、伊勢神宮の神嘗祭(かんなめさい)にあわせ、大小2つの唐櫃に詰められた干鯛が漁船に積まれ、船団を形成して伊勢神宮に運ばれます。
この「おんべ鯛」が干されている様子を、偶然見ることができました。台の上に整然と置かれています。時期によって奉納する干鯛の数量は決まっているというので、並べられている数はおそらく160匹。貴重な光景でした。
唐櫃の実物も見ることができました。高速船の乗り場の「島の駅」に、展示されています。説明文によると、2015(平成27)年の神嘗祭まで使われていたということです。
名物のしらす、牡蠣…肉厚のジューシーなフグ
もちろん、豊かな海鮮も、この島の魅力です。島に到着して最初に向かったのが、「篠島お魚の学校&しらす食堂2929(フクフク)」でした。ここで昼食を取ったのですが、出て来た料理が圧巻でした。
しらす丼に、さばフグ、そして牡蠣寿司。篠島漁港は、「しらすが日本一多く揚がる漁港」だといいます。島を巡っていると「篠島のしらすは日本一」との文言をよく見ます。後で、一緒に篠島を案内してくれた篠島観光ホテル大角の中村建介支配人によると、30年ほど前、浜に天日干ししてあるしらすを食べながら、小学校に通ったそうです。それほど、篠島ではしらすは日常的な海の幸でした。
名物のしらすをいただきます。丼の上に一緒にのっているひじきは「生ひじき」。お店の辻根美(もとみ)さんが、「今年初の生ひじきなんです」と説明してくれました。通常のひじきよりも太くて旨味のある豊かな味わい。しらすは、醤油をかけなくてもちょうどよい塩気でご飯が進みます。
サバフグは、たまり醤油で漬けた「フグのたまり干し」。肉厚の切り身をコンロでちょうどよい具合に焼き、そのままかぶりつきます。旨味がぎゅっと詰まったジューシーな“肉汁”が口の中に広がります。なんとも贅沢な一品です。
牡蠣寿司も絶品でした。ほのかな磯の香が鼻孔をくすぐります。そして、辻さんが、粋な演出をしてくれました。登場したのは、ドレスを着たソプラノの川島弘子さん。友人のピアノの伴奏で、最初にプッチーニの歌劇「ジャンニ・スキッキ」の劇中歌「私のお父さん」を朗々と歌い上げると、次にこの食堂のオリジナル「牡蠣寿司音頭」を披露してくれたのです。この日が“初演”。美しい歌声で、料理の数々がいっそう美味しく感じられました。