チャーラーを求めて、『パンダ食堂』へ再訪
エビフライの美味しさもさることながら、驚いたのはご飯の美味しさ。粒が立っていて、噛むごとにじんわりと甘みが広がるのだ。うん、食堂はやっぱりご飯が旨くなきゃ。ご飯の旨さに感心していると、店員さんができたての炒飯を他のテーブルへ運んでいるのを見た。
それがめちゃくちゃ美味しそうで、このクオリティの高すぎるご飯で炒飯を作ったら、いったいどんな味になるのか。もう、頭の中は炒飯に占領されている。
とはいえ、「エビフライ定食(大)」を食べた後では完食する自信がない。次回は絶対に炒飯とラーメンを注文すると心に決めて、この日は泣く泣く諦めて店を後にした。
それから約2週間後、奈良へ出張した帰りに立ち寄った。夜7時半を回っていたが、店内は多くの客で賑わっていた。やはり、ここは人気店なのだ。
注文したのは、「中華そば」(650円)と「焼きめし(並)」(550円)。食堂ゆえにラーメンや炒飯と呼ばないことにも好感が持てた。
まず、目の前に運ばれたのは「中華そば」。想像していた通りの、あっさり系のスープに心が和む。具材はチャーシューとメンマ、ナルト、山盛りのネギ。ビジュアルも昔ながらの中華そばそのもの。これ、これっ! 私はこんな中華そばを探していたのだ。
まずは、スープをひと口。ほんのりと甘くて、やさしい味わいが身体に染みわたる。やんわりと縮れのある中細麺の適度な弾力も素晴らしい。町中華のラーメンはコショウをパパっとかけて食べたくなるが、これはデフォルトがよい。味変するのももったいないほどクオリティが高いのである。
ラーメンマニアにとっては、尖った味ではないので物足りなく感じるかもしれない。しかし、チャーラーにおいてはこの普通さ加減が重要なのである。わかるかなぁ。
感激しながら「中華そば」を食べていると、「焼きめし」が目の前に。具材はチャーシューとネギ、ニンジンと、超シンプル。
早速、レンゲを突っ込んで頬張ってみる。あれ? 「エビフライ定食(大)」で食べたご飯からパラパラ食感をイメージしていたが、しっとりと……。いや、違うな。フワフワとした今まで味わったことがない食感。なっ、何じゃこりゃぁ!
冷静に分析してみると、その食感の秘密は卵。たっぷりの卵がご飯のひと粒ひと粒をコーティングしているのだ。噛んでいると、コーティングが剥がれて、塩とコショウの絶妙な味付け加減とともに美味しいご飯がひょっこりと顔を出す。もう、たまらん!
なぜか口の中がいっぱいになるまで頬張りたいという欲望に駆られ、レンゲを忙しく動かして掻き込んだ。ゆっくりと飲み込んで、まだ口の中に残る味の余韻を「中華そば」のスープで洗い流す。すると、ふたつの美味しさがひとつになる瞬間がある。これこそがチャーラーの醍醐味だ。
こんなにも旨いチャーラーを食べたのは久しぶり。しかも、地元ではなく地方で。私の中で『パンダ食堂』は、“チャーラーブックマーク”入り決定。三重県方面へ行ったら、遠回りしてでも立ち寄りたい。
撮影・文/永谷正樹
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