「マージ―ビートで唄わせて」 リヴァプール・サウンズへの愛
私的3曲その2は1984年のアルバム『VARIETY』からシングル・カットされた「マージ―ビートで唄わせて」。ザ・ビートルズに代表された1960年代のリヴァプール・サウンズ~マージ―ビートへの愛が込められた曲だ。バック・ヴォーカルに竹内まりやの先輩でザ・ビートルズ・マニアの杉真理、プロデューサーの山下達郎の友人、伊藤銀次。山下達郎がデビューさせた故村田和人が参加している。村田和人はぼくの高校の後輩で、この時のレコーディングが楽しかったと語っていた。
「恋のひとこと」 フランク&ナンシー・シナトラのヒットカヴァー
私的3曲その3はオリジナル・アルバムでないカヴァー作の『Longtime Favorites』に収録された「恋のひとこと」。フランク・シナトラの娘ナンシー・シナトラ、1967年の全米NO.1ヒットのカヴァーだ。デュエット相手は故大滝詠一。原曲では、パパのフランク・シナトラとナンシーがデュエットしていた。大滝詠一が温かく竹内まりやを包み込んでいる珠玉の1曲だ。この『Longtime Favorites』には竹内まりやの音楽ルーツが伝わって来る選曲となっていた。
メロディーとビートが絶妙な「PLASTIC LOVE」
ここ数年、サブスクリプションを通じて、日本のシティ・ミュージックと呼ばれていた頃の楽曲が世界的にブレイクしている。竹内まりやの1985年のシングル「PLASTIC LOVE」もYouTubeから世界的にブレイクした。例えば「駅」などが好きな竹内まりやファンにとっては意外なブレイクかも知れない。
2021年の最新アルバム『好きなんだよ』でこの曲をカヴァー(リード・ヴォーカルはAyesha)しているクレイジーケンバンドの横山剣と逢った時、メロディーとビートが絶妙な曲なので、例えばソウル・ミュージックの好きなファンにとってはたまらない曲なのだと語っていた。竹内まりやを育てた様々な洋楽は彼女に汎世界的なセンスをもたらしたのだろう。彼女の作曲能力の高さを物語っている。
岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。