即位されたときから、「人生の終い方」への取り組みは始まった
ちなみに今日は「昭和の日」で昭和天皇の誕生日にあたる。
今からさかのぼること33年前の1989年1月、昭和天皇崩御に際し、前例に従って喪儀が行われた。古くからのしきたりにのっとった儀式は壮大かつ長期間にわたった。皇太子さま(上皇さま)と美智子さまは、1年もの間、喪に服して経済活動を自粛した国民の生活、墓陵を造るための膨大な経費、儀式に係る人々の労苦を目のあたりにした。一部の企業のCMも自粛する事態となった。
天皇が亡くなったとき、残された国民を混乱させないためにはどうしたらいいのか。なにより、喪に服しているさなかでは、お代替わりの儀式や催しも華やかには行うことがはばかられる。新しい天皇の御代を寿ぐムードにならないのだ。これらを何とか変えることはできないだろうか。
即位の礼が行われたころ、すでに天皇陛下(上皇さま)は、喪儀と即位に関する行事が同時に進行するのを避けたい、とお考えだったという。喪儀から退位と即位のあり方、墓陵のことなど前例を踏襲せずに手を加えるなら、一刻も早く取り組まねばならなかった。なぜなら、天皇の儀式に関しては、家族のみならず宮内庁など周囲への説明、国会の承認、なによりも国民の理解を得ることが必要だからだ。その一つひとつをクリアして改革を実現するためには、果てしなく長い手順と年月が必要となる。
そうして、平成の天皇に即位したときから、表舞台の華やかな活動と並行して、密かなお二人の「人生の終い方」への取り組みが始まったのである。