週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本欄では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第17回目は「トルコ風ライス」です。
意外と知らない? 父の日の由来
6月19日は6月の第三日曜日にあたり、「父の日」です。母の日と比べて印象が薄いかもしれませんが、母の日同様、アメリカから始まりました。
今から100年ほど前、母親亡き後、男手ひとつで6人の子どもを育て上げた父親の娘が、「お父さんにも感謝の気持ちを伝える日を」と牧師に嘆願。その父親の誕生月が6月であったことから、「父親を尊敬し、称え感謝する日」として1972年、アメリカの正式な記念日として制定されました。
日本で広く知られるようになったのは1980年代、デパートの商戦がきっかけです。ちなみに、母の日のカーネーションに対し、父の日はバラを贈ります。
さて、本稿ではそんな父の日に日頃の感謝を込めて、お父さんの好物をお皿一杯に詰め込んだお酒もご飯も進むクッキングパパのレシピ「COOK.305長崎のユニーク満腹メニュー トルコ風ライス」を紹介します。
超デカ盛り! 荒岩流「トルコ風ライス」に悶絶
「トルコ風ライス」!? と聞いてイメージするのは何でしょうか。メインはケバブのようなスパイスのきいた肉料理? それとも豆や野菜の煮込み料理? 添えられているのは、黄色くて細長いサフランライス?
ぐるぐる渦巻く疑問を抱えながらページをめくると、そこに現れたのは「えっ? なぜ、カレーにスパゲティ? まさかトンカツ?」。
なんと、ワンプレートにドライカレー、スパゲティナポリタンがそれぞれ半量ずつよそられ、その上にドーンと1枚豪快にトンカツが盛り付けられており、圧倒されるボリューム感!まさに「長崎が生んだおとなのお子様ランチ」の言葉通り、大人も子供も大好物の主役級メニューが3品も一堂に会しているワクワク感!
しかし、なぜトルコ風ライスなのでしょうか。スパゲティナポリタン(イタリア)、トンカツ(日本)だし……ふたたび沸々と新たな疑問がわき上がったところで、レシピのまえがきを読むと、「昭和30年代『ボルドー』のマスターのおとうさんがトルコの炊きこみごはん『ピラウ』をヒントにして作りだしたというトルコ風ライス」と触れられています。
調べると、トルコは「ピラフ」発祥の地で、肉や香辛料で炊いた米は「ピラウ」と呼ばれ、主食ではなくつけ合わせでいただきます。
その長崎市内にあるビストロ「ボルドー」のホームページには、「当店シェフの父親が将校クラブに勤めていた頃、冷ご飯を焼き飯にして出すのに外国人の手前、トルコ国の『ピラウ』(炊き込みサフランピラフ)に似せた料理『トルコ風ライス』を考案」と記されています。
続けて、サフランピラフがドライカレーに変わりスパゲティ、トンカツが添えられ長崎に広まったいきさつが書かれています。トルコ発祥のピラフに、スパゲティやトンカツが盛り付けられた斬新なメニューは、さすがいち早く外国文化を取り入れた長崎らしい発想ですね。最近ではB級グルメブームにのって、県外でも知られつつあるようです。