週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本稿では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第18回目は「天ぷら」です。
天ぷらの衣は「薄く、油っこくなく」
本格的な梅雨シーズンのさなか、季節はずれの寒さ「梅雨寒(つゆざむ)」で風邪をひきやすかったり、気分がすぐれなかったりして、いっそう体調管理に気を配る時期です。
そんな不調を「COOK.36 梅雨を吹き飛ばせカラリッ!天ぷら」で乗り切るのがおススメ。旬の魚介や野菜を中心に、アイスクリームまで!? どんどん揚げてサクサク食べて、気分もカラッとアゲていきましょう。
美味しい天ぷらとは衣が薄く、油っこくなく、あくまで素材の持ち味を引き立てるとても繊細な技(わざ)が求められます。衣作りから始まり、揚げ方まで「天ぷらの極意」をぜひ、梅雨でおうち時間が長くなる分、腰を据えてチャレンジしてみましょう。
クッパパ荒岩流天ぷら 材料はいたって「シンプル」
まずは、天ぷらで悩ましい衣作り。でも荒岩流なら材料は「小麦粉=同量の水(あるいは水+卵)」といたってシンプル。
重要なのは小麦粉のグルテンの発生を押さえる、これに尽きます。グルテンは小麦粉に水を加えると生成される弾力のあるたんぱく質です。グルテンの発生した衣は、しめっぽくなってサクッと揚がらず要注意! です。
衣の材料を入れたら、天ぷら用の太めの菜箸で軽く混ぜます。この菜箸は、ふだん用の3倍ほどの太さで、天ぷらを調理する際に欠かせませんので、用意しておきましょう。
太めの菜箸で混ぜると、ダマがたくさん残りますが、天ぷらではむしろ好都合。お菓子作りと違って、粉ふるい器にかけたりしてダマができないようよく混ぜるのは御法度です。その際、衣が温まらないよう、ボウルの下に大きめの器に氷水を入れて、絶えず冷やしておきます。
衣がつきにくい時は、先に具材に軽く小麦粉をまぶしてから、衣をつけるといいでしょう。
見て聴いて揚げる温度をチェック。ナマっぽさが残るのが正解
いよいよ、衣をつけた具材を揚げていきましょう。揚げ油は、新鮮なモノを使って。使い回しの酸化した油は、健康に良くないばかりか、サクッと揚がりません。胡麻油を混ぜると、専門店で食べるような風味豊かな仕上がりになります。
天ぷら鍋を火にかけたら、ここからが勝負。揚げる温度を適正に保つようにするため、温度計がある場合は常ににらめっこ。温度計がなくても、鍋に衣を1滴落として浮き上がり具合をちょくちょく確認して、衣が弾ける音を聞き火加減の調整を早めにおこないます。
微妙な音の変化を聞き逃さないよう、天ぷらを揚げている間は、テレビや音楽を流すのを控えた方がいいかもしれません。レシピにある「油の温度はこう見る」を参考に、ぜひコツをつかんでください。
また、一度に投入する量は多すぎないように。油の温度が低くなって衣がふやけてしまいます。油の温度と揚げ時間はエビやイカ、キスなどの魚介類は170℃~180℃の高温で1分から2分と短時間で。余熱を考慮し、火が通り過ぎて硬くならないようにします。
実は天ぷらこそ、ナマっぽさを生かした新鮮な素材に限るもの。魚介でも野菜でも旬を迎えた活きの良い素材を、薄い衣でコーティングして蒸し焼きにするイメージでしょうか。
アツアツをふうふう言いながら、揚げているそばから、いただきましょう。油ハネや火傷に充分注意しながら、料理人になったつもりでカッコよく!?家族や友人にふるまえば、喜ばれそうですね。