クッキングパパの読んで美味しいレシピの話

え!? なんて読むの? 国も認める郷土料理「冷や汁」はクッキングパパも作った真夏の絶品栄養食!!

週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。 著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返…

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週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。

著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本欄では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。

長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第20回は「冷や汁(ひやしゅる)」です。

宮崎の郷土料理「冷や汁」 味噌汁と違う魅力とは?

異例の早さで梅雨が明け、いよいよ夏本番。連日、灼熱の太陽が照りつけるのに合わせて疲労が蓄積され、早くも夏バテが心配になりますよね。

太陽が高い時間帯は、キッチンでできるだけ火を使わずに、パッパッと調理を済ませたいもの。昔の日本人は、夏をいかにして乗り切ったのか――。今回はクッキングパパ第14巻「COOK.132 日本の味 冷や汁(ひやしゅる)」を参考にしてみましょう。

冷や汁は「ひやしる」とも呼ばれ、焼き魚のほぐした身を味噌やすりごまと合わせて出汁で伸ばし、豆腐やキュウリ、薬味などを入れたものをご飯の上にかけて食べる宮崎県の郷土料理です。

宮崎特有の黒潮が運ぶ日向灘の海の幸、畑で獲れたての新鮮な野菜を用いて作られる冷や汁は、昔から家庭ごとに作り方が受け継がれ、主に夏の間、親しまれてきました。

農林水産省が「次世代に伝えたい大切な味」として定めた「うちの郷土料理」にも選ばれています。そのなかで、「かつて農民が夏の重労働をおこなう際、時間や食欲のない時でも、充分な栄養補給や体力回復のために、簡単に食べられる生活の知恵として伝承されてきた料理である」と記されています。まさに、現代にもベストマッチな猛暑の栄養食と言えるでしょう。

そう聞いて、暑さのため停滞していたやる気が復活、早速とりかかりましょう。

魚もゴマもストレスも!? 無心ですって心が整うクッキングパパレシピの楽しさ

これぞ日本の味! 夏をひんやり彩るオリジナル冷や汁レシピは栄養満点 (クッキングパパ『COOK.132 日本の味 冷や汁(ひやしゅる)』より)

まず、アジやカマスなど好みの魚を焼いている間、昆布だしを取って冷ましておきます。その間、キュウリの薄切り、ミョウガやシソなどの薬味も千切りにします。ゴマも香りを出すため軽く煎っておきましょう。焼き魚は、小骨まで注意深くとって身をほぐします。

さて、ここからがポイントです。大きめのすり鉢に煎りゴマを入れ、すりこぎ棒をくるくる回しながら、粒がなくなるまですります。さらにほぐした魚の身を加えてすり、最後に味噌を入れてねっとり粘りが出るまですり続けます。根気強く、です。

余談ですが、すりこぎ棒に山椒の木が多く使われているのは、なぜでしょうか。調べてみると、山椒の木には解毒作用があり、すりこぎ棒でする際に出る削られた粉が食材と混ざり合って食あたりを防ぎ、香りづけにも最適とのことです。

昔ながらの道具には先人の知恵がつまっており、それを知るとますます愛着が沸くというもの。忙しい毎日、時々はすり鉢とすりこぎ棒を棚の奥から出して、無心で回すと雑念が消え心も整って、清々しささえ感じられる――これまた料理の醍醐味ではないでしょうか。

本題に戻りましょう。すりおわったら、すり鉢の中身を鉢の内側にまんべんなく広げて塗り付けます。それをガバッと鉢を逆さまにひっくり返し、底の出っ張りを持ってコンロ口で中火に当て、うっすら焦げ目がつくまで炙りましょう。魚とゴマ、味噌が相まって香ばしい匂いがいっそう食欲を刺激します。

そこへ冷ました出汁を注ぎ、キュウリや大葉、梅干し、ミョウガなどを浮かべてサッとご飯にかければできあがり! お子さんからご年配の方まで、汁もののようにスルスルとのど越しが良くて栄養満点、厳しい暑さのさなか食卓への出番が多くなりそうですね。

うどんからおひたしまで…ユニークなご当地冷や汁

冷や汁=宮崎県のイメージが強いですが、実は全国各地には、食文化や風土、気候といったさまざまな条件で定着した「冷や汁」が存在します。

前回(第19回「うどん」)の本連載で、北関東は良質な小麦に恵まれ、“うどん文化”が発達している旨、記載しました。そのなかで埼玉県を中心に栃木県、群馬県では、冷や汁をうどんやそうめんのつけ汁として食べる「冷や汁うどん」が夏の食卓の定番です。海なし県の北関東3県は宮崎県とは違って、焼き魚は入っていません。具材のすりたてを食べることから、「す(つ)ったて」とも呼ばれています。

また、山形県の「冷や汁」は、干し貝柱やシイタケ、凍みこんにゃくや豆腐でとった出汁に茹でたほうれん草や小松菜といった旬の野菜を浸していだきます。汁ものというより「おひたし」ですね。こちら、夏に限らず年間を通して親しまれているそうです。

冷や汁をいただいて、風鈴の音色を聞きながら縁側で夕涼み…忘れられつつある日本の夏の風情を味わってみてはいかがでしょうか。

文/中島幸恵、漫画/うえやまとち

◆『クッキングパパ』とは?

福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。

週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年4月現在、単行本は161巻。

※「おとなの週末Web」の記事では本稿紹介の漫画、クッキングパパ 「COOK.132 日本の味 冷や汁(ひやしゅる)」を一話丸ごと読むことができます。

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