お笑いコンビ「ティモンディ」前田裕太さんの、「目指せ、理想の大人」をメインテーマに掲げた連載コラム。30代を目前にした前田さんが「大人」を目指して過ごす日々を、食・趣味・仕事など様々な視点で綴ってくださいます。連載は、第…
画像ギャラリーお笑いコンビ「ティモンディ」前田裕太さんの、「目指せ、理想の大人」をメインテーマに掲げた連載コラム。30代を目前にした前田さんが「大人」を目指して過ごす日々を、食・趣味・仕事など様々な視点で綴ってくださいます。連載は、第1・3木曜日に更新です。「(理想の)大人ってなんだろう?」を一緒に考えながら、前田さんの成長を見守りましょう!
今回は、「人付き合い」編の第3回。約束の当日になって、なぜかとてつもなく行くのが億劫になってしまった経験、ありませんか?行ってしまえば楽しいのはわかっているのに、どうにも気分が乗らない。そんな“家の悪魔”にとりつかれたとき、前田さんは、とある方法で自分を納得させているようです。
恐るべし、“家の悪魔”の囁き
約束をした時は盛り上がったのに、当日になると億劫になる時がある。自分勝手な話だ。
家を出ちゃえば勝ちなのだけれど、準備をして家を出ることが面倒で、やっぱり今日の予定なくならないかなあ、と願う。
楽しみではなくなってしまった訳ではない。ただひたすらに、家から出るのが面倒に思えて仕方なくなってしまっただけだ。
現に、家を出てさえしまえば、楽しく予定を過ごせたりする。
ただ、家で準備をする段階では、どうかスプリンクラーがぶっ壊れたような豪雨に見舞われて、やっぱり今日の予定はなしにしよう、と提案しても咎められない悪天候に今からなりますように、と、学校が休みになれと願う小学生のような思考になる。
今日の野球部は室内練だな、と思うほどの雨が降れば、約束を別日にしよう、と連絡しても然るべきだろう。
自分が所属していた高校の野球部は限界まで雨天決行ではあったけれど。
随分と子供のような気分屋で我が儘だなあだと自分でも思う。
約束に対する楽しみよりも、その場所に行く労力が思ったよりも必要だった時に起きるこの現象を、”家の悪魔”と呼んでいる。
要は、その悪魔が耳元で囁くのだ。
「その食事に行くよりも、家で過ごした方が楽だべ」
家の悪魔が、中居くんのような神奈川弁で話しかけてくる。私が神奈川出身だからか、地元の友達と同じような距離感で天から声がしてくる。
ここだけの話だけれど、家の悪魔の声に耳を傾けてしまい、「僕は体調不良なんだ」と自分に言い聞かせて、実際に体調が悪くなって約束を反故にしてしまったこともある。
熱出ちゃって、という理由で断ったら、本当に熱が出てしまった時には、自己暗示の力の強さに震えたものだった。
空を飛べると自分に言い聞かせれば、羽田札幌間を自力で飛行できるような気がしないこともない。
悪魔の囁きの正体は…
体調が悪くならなかったとしても、悪くなったことにして約束を反故にしたことさえある。
ろくな人間じゃないなと自分でも思うけれど、実はそこまで罪悪感がある訳でもない。家の悪魔が悪いのだ。
言いくるめるのが上手いったらなんの。
私の思う理想の大人は、この家の悪魔と上手く関係を築けるか、もしくは退治することができるほどの意志が必要だと思う。
家の悪魔は、私を人付き合いから遠ざけようと必死だ。
「後輩なんだから断ったって文句言われないっしょ」
「一度断って疎遠になるなら友達とは言えないべ」
とあれやこれや言葉を重ねて、家でダラダラ過ごさせようとしてくる。どうにかして、この悪魔を滅せなければいけない。
そう思っていた。けれど、どうだろうか。
これって、単に疲れているだけな気がしてきた。
疲労が溜まっているから、約束を遂行するよりも、回復に努めよ、と内なる自分が声を発しているだけのような気がする。
自分が悪魔だと決めつけていた、その声は、きっと、外出するよりも家で休養を取れ、と自身にSOSのダイレクトメッセージを直接送り届けてくれていただけではないだろうか。
家の悪魔ではなく、メーデー。救難信号だったのだ。
大人は、自分の救難信号に耳を傾けられる人間のことを指す。
約束をしていたとしても無理はせず、適度に断ることもしながら、自分を一番にすることができる人間でありたいと思う。
とりあえず今日の予定はキャンセルしよう。
前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で画力を披露したり、複数メディアでコラムを執筆するなど、マルチな活動で注目を浴びている。
ティモンディ
高岸宏行・前田裕太によるお笑いコンビ。コンビ結成は2015年、グレープカンパニー所属。高岸のポジティブなキャラクターや、二人の野球経験と身体能力などがバラエティ番組で引っ張りだこに。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディチャンネル』の登録者数は約25万人。